雄の子孫に危険を「警告」する遺伝メカニズム、マウスで発見

2013年12月02日 16:42 発信地:パリ/フランス 【写真】 【ブログ】

パンをかじるネズミたち。都内で(2008年1月6日撮影)。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO

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【12月2日 AFP】特定の匂いを恐れるように訓練された雄の実験用マウスは、精子内のあるメカニズムを介して、その匂いに関連して受けた衝撃を後に生まれる雄の子孫に伝えることができるとする研究論文が1日、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス(Nature Neuroscience)」に掲載された。

 動物は祖先の心的外傷(トラウマ)の記憶を「継承」し、あたかも自分がその出来事を体験したかのような反応を示すという説に証拠をもたらすものだと論文は主張しているが、これは後成遺伝学(エピジェネティクス)研究の最新の発見だ。エピジェネティクスでは、遺伝子の基礎情報であるDNAの塩基配列に何の変化がなくても、遺伝子が異なる振る舞いを始める要因として、環境要因が挙げられている。

 論文の共著者の一人、米エモリー大学医学部(Emory School of Medicine)のブライアン・ディアス(Brian Dias)氏は「祖先の経験が子孫の世代にどのように影響するのかを知ることで、継世代的な神経精神疾患の発症に関する理解を深めることができるだろう」と話す。また将来的には、トラウマとなる記憶の「継承」を軽減できる心理療法の開発につながるかもしれない。

■子孫は少量の匂いでも感知

 ディアス氏と論文共著者のケリー・レスラー(Kerry Ressler)氏のチームは、マウスの足に電気ショックを与えることで、サクラの花に似た匂いを恐れるように訓練し、その後、このマウスの子孫が同じ匂いを嗅がされた時にどの程度おびえた反応を示すかを調べた。

 子孫のマウスたちは、元のマウスの訓練時にはまだ母親マウスの胎内にもおらず、また今回の実験前に同じ匂いを嗅いだ経験は一度もなかった。しかし、レスラー氏はAFPの取材に対し、訓練を受けたマウスの子孫は「はるかに少量の匂いでも感知して反応することができた。これは子孫が(その匂いへの)感受性が高くなっていることを示唆している」と語った。

 子孫マウスは、訓練を受けていないマウスの子孫に比べ、サクラの花の匂いに対して約2倍強い反応を示した。一方で、別の匂いには同様の反応を示さなかった。

 次に訓練を受けたマウスの精子から子孫に受け継がれた遺伝子「M71」を調べた。「M71」は鼻の中でサクラの花の匂いに特に反応する嗅覚受容体の機能を制御する遺伝子だが、子孫マウスの「M71」においてDNAの塩基配列には何も変化はなかった。ただし、この遺伝子には後成遺伝的な痕跡があった。ディアス氏によれば、この痕跡が遺伝子の振る舞いを変化させ、子孫の代になって「さらに発現する」原因となる可能性があるという。

 またこの後成遺伝的な痕跡が今度は、訓練を受けた雄マウスやその雄の子孫の脳に物理的変化を生じさせ、脳の嗅覚部位にある嗅覚糸球体が大きくなっていた。「これは鼻の中で、より多くのM71神経細胞が、さらに多くの軸索(神経突起)を伸ばすようになるからだ」とディアス氏は説明する。

 脳内での同様の変化は、サクラの花の匂いを恐れる父親の精子を用い、人工授精で受胎した子孫でも観察された。また子孫マウスの精子中でも、遺伝子発現に変化がみられた。

 レスラー氏は「このような情報継承は、子孫たちが将来の環境で遭遇する可能性が高い特定の環境特性の重要性について、親が子孫に『知らせる』ための有効な手段の一つと思われる」と述べた。

 英国の遺伝学者マーカス・ペンブレイ(Marcus Pembrey)氏によると、今回の研究成果は、恐怖症、不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの研究に役立つ可能性がある。(c)AFP/Mariette LE ROUX

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