【日本の解き方】ホワイトカラー・エグゼンプション、まずは公務員が率先垂範を

2013.08.25

 ホワイトカラー・エグゼンプションとは、いわゆるホワイトカラー労働者に対して、「週40時間が上限」といった労働時間の規制を適用しないことなど労働規制の適用除外とする制度だ。欧米では、一定のホワイトカラーについて労働規制の適用除外がある。

 この制度は、先進国では類似制度があるにもかかわらず、日本では未導入であることから、経団連などから、これまでも労働規制緩和として要望されてきたものだ。

 第1次安倍政権の時にも検討され法案化の予定であったが、マスコミから一斉に批判された。欧米では労働者のうち対象になるのは年収が一定以上で1割程度のごく一部の管理者であるが、その当時、マスコミから一般労働者を対象にする「残業代ゼロ法案」と報じられた。

 当時、官邸に勤務していた筆者の担当分野ではなかったが、それでもひどい誤報だなと思っていた。しかし、いったん間違ったイメージに染まると、なかなか軌動修正はできず、結局、国会提出を断念した経緯がある。

 当時は「年収900万円以上」「企画・立案・研究・調査・分析の5業務に限る」と対象者を限定していたが、今回は「年収800万円以上」とされ、一部の企業での実験的導入という方向のようだ。

 国税庁の民間給与実態統計調査でみると、年収800万円以上の人は13%程度である。また、民間会社のデータによれば、平均年収が800万円以上になるのは年齢55歳以上だ。ホワイトカラー・エグゼンプションで対象になるのは、全体としてみれば、年のいったごく一部の管理職でしかない。

 ところが、業種によっては事情は異なり、年収の高い金融やマスコミでは対象者は多くなる。真偽は謎であるが、実は第1次安倍政権の時、年収、残業代が多かったマスコミがホワイトカラー・エグゼンプションに反対し、それに労働界が乗ったという構図があるといわれている。

 ホワイトカラー・エグゼンプションは、対象者が限定されているので、政府としては比較的やりやすい政策だ。前回はその手順を間違い、対象の限定を早期に明確にしなかったので失敗した。

 今回は対象の年収をいち早く打ち出した。今のところ800万円以上だが、これを前回並みの900万円、前回より譲歩した1000万円以上にすれば、制度を導入しやすいだろう。

 むしろ問題は、労働問題を矮小化している点ではないか。本コラムで指摘した「解雇ルールの明確化」はトーンダウンしている。また、労働者側だけでなく、使用者側にも独立した取締役の導入とセットで解決すべきだ。

 さらにいうと、解雇ルールの明確化はなにより公務員で率先垂範し、ホワイトカラー・エグゼンプションも公務員で民間に先行してやるべきだ。今でも管理者の公務員は管理職手当をもらって残業代ゼロなので、大きな実害はないだろう。公務員が先行する事例を作れば、民間を説得するのも容易になるにちがいない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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