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反吐が出る【小説閃光ネタバレ】とおまけ。

國東

2013年12月08日 21:59

いや閃光じゃねーし→閃光でした　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　という伏見さんとネタバレキャラの話。　
+夏に書いた猿美再録。/公式に殺される前に自分で崖から飛び降りる所業。これがやりたかった。満足した。/描写が諸々不味いので苦手なものが多い人は自衛するようにしてください。
追記：ついでだし後味良くないシリーズとして群さんに捧げた猿美（未満）もまとめておきます。

追記2:タグが内容とミスマッチだと御指摘がありましたので訂正いたしました。

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※情熱だけがほとばしる。閃光からの捏造。
※※ネタバレあるわ描写が最低だわ人を選び過ぎるので各自自衛する方向で宜しくお願いします。
※※※一本目　伏見親子の話/二本目　猿美未満の話

　どこの誰が言ったのか知らないが、『親は子供を愛するものだ』なんて誰が決めたのだか。
　ちょっとよくわかんねぇわ。
　言う事聞かない反抗的なクソガキ相手でもほんとに可愛いって思ってんのかな。

　だとしたらそいつらはなんか狂ってんだ。
　なんか、狂ってんだよ。

　生憎おれは普通に普通の感性しかないので、むかつくものはむかつくし気に入らないものは気に入らない。
　他に何か必要なものなんて、あるか？

【反吐が出る】

　おえ、と。もう吐く物もないのに猿比古は嘔吐いた。
　そんな何度も指突っ込まなくたって大丈夫だって。人間そう簡単に死ぬかよ。

「おまえほんと潔癖っつーかなんつーかさ。……めんどくせぇわ」

　ばたばたと唾液なのか胃液なのかよくわからない雫が落ちる。
　汚ねぇな、後片付けはちゃんとしろよ。

「か、……かたづけ、」
「そ、片付け。まさかおれにおまえのゲロ触らせる気かよ」

　論外だな、と思った。論外だ。
　こうして今胃液の———塩酸のにおいが漂ってくるだけでも不愉快なのに、これ以上近付いて剰えその片付けをしろとかいうつもりか。冗談じゃない。

「虫と仲良くできなかったのはお前だろ」

　まぁ多少やり過ぎたかなと思わなくもないが、あんだけ泣き叫ばれたらこっちもムキになるって奴。
　ぎゃあぎゃあうるせぇから黙らせようと思って手近にあった———手の中にあったカマキリ突っ込んだだけだし、特に深い意味なんてない。全く。これっぽっちも。

「ハチ食う伝統だってあるんだし、イナゴだって佃煮になるんだから、カマキリ食ったぐらいがなんだよ」

　ごぼ、と音がして、また吐いたらしい。
　まぁ吐きたいなら好きなだけ吐けよって気分になってきた。どうせ片付けんのおまえだしな。好きにすれば。

　部屋を出るためには扉の近くで蹲っているのを跨がなくてはならない。
　ってことはゲロの側も通らなくちゃならないってことだ。うわ、最悪。ここは駅のホームじゃねぇんだからさっさと片付けろよな。

「どけよ、通れないだろ」

　青白い、口の周りをべとべとに汚した、もう見るからにひでぇ面で睨んでくる。

「聞こえなかったのか。どけって」

　動けないとか動きたくないとかそのへんのあれはどうでも良い。
　おれがどけって言ってるんだから、どけば良い。それだけだ。

「もう一回しか言わねぇぞ。『どけ、猿比古』」

　のろのろと動く。とろい。
　こいつ、わざとやってんのかもしれない。鬱陶しい。
　ガキのくせに一丁前に反抗なんかしてんなよ。

　腹を蹴り飛ばすとべしゃ、と音をたてて顔から突っ込んだ。
　

　胃液の溜まりの中に、まだうぞうぞと動いているカマキリが落ちている。
　『蟷螂の斧』は折れ、内臓のはみ出した緑色の塊は確かに気持ち悪かった。あと、口の中に入れるにはちょっと大きすぎた。それは認める。

「そう言えばカマキリも昆虫なんだから外骨格だよな」

　不意に思い出した。
　脊椎動物は内骨格、無脊椎動物は外骨格でその身体構造を維持している。ヒトは内骨格、カマキリもエビも外骨格。
　じゃあ殻むいて食わせるべきだったのかな。手間だけど。

　何の話だっけ。別にそんなこと言いたかったんじゃなかったはずなんだけど。……あ、ああ、そうだ。
　内骨格の生物と外骨格の生物の一番大きな差を挙げるなら、その大きさの限界である。外骨格だと身体を大きくするのに一々脱皮を繰り返さなくてはならないので内骨格生物ほど大きくはならない。
　堅牢な守りの代償に、小さく閉じこもることしか出来なくなった。

「あー、じゃあ共食いだったな」

　それは悪い事をした。
　次からは考えるから、それで良いだろ？

（2013 12/8　ごめんねーこういうのが一番楽しい。性根がばれる）

[newpage]

※群さんに捧ぐ後味よくない猿美。猿美っていうか猿美が成立しないねって話なので左右の別は大した問題ではない。
※※今回の閃光版とは全く無関係の、劇場版の科白が出た時にわーってなって書いたものです。

「甘えんなよ」

　そう言ってやった時の顔ったらなかった。
　びっくりしたのでもない。がっかりしたのでもない。俺が徴を焼いた時に見せたのと全く同じ顔で、こちらを茫然と見ている。美咲が。

「それともお前は一度捨てたものを拾い食いするぐらい意地汚い奴なのかよ、美咲」

　違うだろ。そうじゃないだろ。
　俺の知ってるお前はそんなみっともない奴じゃないはずだ。そうなんだよ。わかるか。一度捨てたら二度と振り向くな。そうやってずっと前へ進める奴なんだ。だから、

「———俺の八田美咲を穢すな」

ーfanaticismー

　周防尊が死んだ。
　十束多々良が死んだから自棄になったのか、そもそも死ぬつもりだったのかわからない。数日前に一度喋った時の雰囲気はどちらとも言い難かった。

　何れにせよ死んだのだ。あの男は死んだ。
　あれを王と奉る幾多の臣民を置いて、一人で楽になったのである。
　絆？　誇り？　仲間の証？
　最高に痺れるフレーズじゃないか。結局あいつらは王の自殺を止めもせずにただただ見送った。最早クランズマンでもなんでもない俺にはそういう風にしか受け取れない。

『そんなの何も知らなかった』

　美咲は俯いて、呻くようにそう言った。

『俺は何も知らなかったんだ』

　本当に可哀想な奴だと思った。
　或いは心底おめでたい奴だと思った。

　お前だけだろ、何も知らなかったのは。口に出しかけて『今言うべきかどうか』を少しだけ迷った。
　こいつは本当に何も知らなかったんだろう。仇討ちが何を意味するかも、周防尊が何故死んだかも、周りの連中がきっとそれを知っていてそうさせたことも、何もかも、知らなかった。気付かなかった。馬鹿だから。どうしようもない、馬鹿だから。

　そういう馬鹿な奴だから、少しだけ可哀想だと思ったのかもしれない。
　可哀想に思って、どうせ何を言い出すかわかっていたのに話を聞いてやった。
　数年ぶりに寄越してきたメールも相変わらず素っ気ない文面だったし、ああ変わってないんだな、なんて甘いことを考えたのも、やっぱりちょっとした憐憫だったんだろう。最後の憐憫だ。俺があいつにかけた最後の情けだ。

『———猿比古、俺どうしたら良いのかな』

　ぶつりと何かが切れる音がした。
　本当に切れていたのかもしれない。噛み締めた唇の裏側か、どこかの血管か。ぶつっと。切れてしまった。

「甘えんなよ」

　思った以上に冷めた声が出た。
　呆れも怒りも何もかも通り越して、ただ冷たいだけの声が。

「……猿比古……？」
「それともお前は一度捨てたものを拾い食いするぐらい意地汚い奴なのかよ、美咲」

　そんな風に捨て犬みたいな顔をするな。反吐が出る。
　先に俺を捨てたのはお前だ。お前が、俺を、捨てたんだ。
　俺にはお前が必要だったし、きっとお前にも必要なんだと思ってた。そう信じてたけど、そうじゃなかったんだろ。お前には周防尊が居ればそれで良かったんだろ。仲間が、絆が、誇りがあれば他には何も要らなかったんだろ。明日を滅ぼすことなんか、どうでも良いって言ったくせに。そういう話をすること自体が下らないって、そう言ったくせに。

　下らない。
　何もかも下らない。

「……なんでそんなに怒ってんのか、わかんねぇよ」

　泣けば全部解決してくれるのか。ガキか。幼稚園児か。優しい保母さんが来るまでそうやって泣き倒すか。泣けば俺が許すとでも思ったのか。馬鹿だろ、お前。

「怒ってる？　違うだろ。単に昔とは何もかも変わっちまっただけのことだ」
「わかんねぇよ。何もわかんねぇよ。十束さんも尊さんも居ねぇし、草薙さんだって、もう、」

　吠舞羅はどこにもないのだと、襟を掴みながら唸った。

　一度壊れたものは二度と元に戻らないのだ、と頭の片隅でひどく冷静な自分が言った。
　壊れたものをどうにかしようとすればするほど余計にひどく壊れていく。
　もう何も言うなよ。
　どうにもならないんだよ。
　お前は馬鹿だからわかんないかもしんねぇけど、砂の城は欠けたところからざらざらと崩れる。

　だからな、美咲。

「———俺の八田美咲を穢すな」

（2013 7/15（12/8再録）　八田さん一回ぐらい痛い目みとくべきかなって）

※情熱だけがほとばしる。閃光からの捏造。
※※ネタバレあるわ描写が最低だわ人を選び過ぎるので各自自衛する方向で宜しくお願いします。
※※※一本目　伏見親子の話/二本目　猿美未満の話

どこの誰が言ったのか知らないが、『親は子供を愛するものだ』なんて誰が決めたのだか。
　ちょっとよくわかんねぇわ。
　言う事聞かない反抗的なクソガキ相手でもほんとに可愛いって思ってんのかな。

だとしたらそいつらはなんか狂ってんだ。
　なんか、狂ってんだよ。

生憎おれは普通に普通の感性しかないので、むかつくものはむかつくし気に入らないものは気に入らない。
　他に何か必要なものなんて、あるか？

【反吐が出る】

おえ、と。もう吐く物もないのに猿比古は嘔吐いた。
　そんな何度も指突っ込まなくたって大丈夫だって。人間そう簡単に死ぬかよ。

「おまえほんと潔癖っつーかなんつーかさ。……めんどくせぇわ」

ばたばたと唾液なのか胃液なのかよくわからない雫が落ちる。
　汚ねぇな、後片付けはちゃんとしろよ。

「か、……かたづけ、」
「そ、片付け。まさかおれにおまえのゲロ触らせる気かよ」

論外だな、と思った。論外だ。
　こうして今胃液の———塩酸のにおいが漂ってくるだけでも不愉快なのに、これ以上近付いて剰えその片付けをしろとかいうつもりか。冗談じゃない。

「虫と仲良くできなかったのはお前だろ」

まぁ多少やり過ぎたかなと思わなくもないが、あんだけ泣き叫ばれたらこっちもムキになるって奴。
　ぎゃあぎゃあうるせぇから黙らせようと思って手近にあった———手の中にあったカマキリ突っ込んだだけだし、特に深い意味なんてない。全く。これっぽっちも。

「ハチ食う伝統だってあるんだし、イナゴだって佃煮になるんだから、カマキリ食ったぐらいがなんだよ」

ごぼ、と音がして、また吐いたらしい。
　まぁ吐きたいなら好きなだけ吐けよって気分になってきた。どうせ片付けんのおまえだしな。好きにすれば。

部屋を出るためには扉の近くで蹲っているのを跨がなくてはならない。
　ってことはゲロの側も通らなくちゃならないってことだ。うわ、最悪。ここは駅のホームじゃねぇんだからさっさと片付けろよな。

「どけよ、通れないだろ」

青白い、口の周りをべとべとに汚した、もう見るからにひでぇ面で睨んでくる。

「聞こえなかったのか。どけって」

動けないとか動きたくないとかそのへんのあれはどうでも良い。
　おれがどけって言ってるんだから、どけば良い。それだけだ。

「もう一回しか言わねぇぞ。『どけ、猿比古』」

のろのろと動く。とろい。
　こいつ、わざとやってんのかもしれない。鬱陶しい。
　ガキのくせに一丁前に反抗なんかしてんなよ。

腹を蹴り飛ばすとべしゃ、と音をたてて顔から突っ込んだ。

胃液の溜まりの中に、まだうぞうぞと動いているカマキリが落ちている。
　『蟷螂の斧』は折れ、内臓のはみ出した緑色の塊は確かに気持ち悪かった。あと、口の中に入れるにはちょっと大きすぎた。それは認める。

「そう言えばカマキリも昆虫なんだから外骨格だよな」

不意に思い出した。
　脊椎動物は内骨格、無脊椎動物は外骨格でその身体構造を維持している。ヒトは内骨格、カマキリもエビも外骨格。
　じゃあ殻むいて食わせるべきだったのかな。手間だけど。

何の話だっけ。別にそんなこと言いたかったんじゃなかったはずなんだけど。……あ、ああ、そうだ。
　内骨格の生物と外骨格の生物の一番大きな差を挙げるなら、その大きさの限界である。外骨格だと身体を大きくするのに一々脱皮を繰り返さなくてはならないので内骨格生物ほど大きくはならない。
　堅牢な守りの代償に、小さく閉じこもることしか出来なくなった。

「あー、じゃあ共食いだったな」

それは悪い事をした。
　次からは考えるから、それで良いだろ？

（2013 12/8　ごめんねーこういうのが一番楽しい。性根がばれる）

[newpage]

※群さんに捧ぐ後味よくない猿美。猿美っていうか猿美が成立しないねって話なので左右の別は大した問題ではない。
※※今回の閃光版とは全く無関係の、劇場版の科白が出た時にわーってなって書いたものです。

「甘えんなよ」

そう言ってやった時の顔ったらなかった。
　びっくりしたのでもない。がっかりしたのでもない。俺が徴を焼いた時に見せたのと全く同じ顔で、こちらを茫然と見ている。美咲が。

「それともお前は一度捨てたものを拾い食いするぐらい意地汚い奴なのかよ、美咲」

違うだろ。そうじゃないだろ。
　俺の知ってるお前はそんなみっともない奴じゃないはずだ。そうなんだよ。わかるか。一度捨てたら二度と振り向くな。そうやってずっと前へ進める奴なんだ。だから、

「———俺の八田美咲を穢すな」

ーfanaticismー

周防尊が死んだ。
　十束多々良が死んだから自棄になったのか、そもそも死ぬつもりだったのかわからない。数日前に一度喋った時の雰囲気はどちらとも言い難かった。

何れにせよ死んだのだ。あの男は死んだ。
　あれを王と奉る幾多の臣民を置いて、一人で楽になったのである。
　絆？　誇り？　仲間の証？
　最高に痺れるフレーズじゃないか。結局あいつらは王の自殺を止めもせずにただただ見送った。最早クランズマンでもなんでもない俺にはそういう風にしか受け取れない。

『そんなの何も知らなかった』

美咲は俯いて、呻くようにそう言った。

『俺は何も知らなかったんだ』

本当に可哀想な奴だと思った。
　或いは心底おめでたい奴だと思った。

お前だけだろ、何も知らなかったのは。口に出しかけて『今言うべきかどうか』を少しだけ迷った。
　こいつは本当に何も知らなかったんだろう。仇討ちが何を意味するかも、周防尊が何故死んだかも、周りの連中がきっとそれを知っていてそうさせたことも、何もかも、知らなかった。気付かなかった。馬鹿だから。どうしようもない、馬鹿だから。

そういう馬鹿な奴だから、少しだけ可哀想だと思ったのかもしれない。
　可哀想に思って、どうせ何を言い出すかわかっていたのに話を聞いてやった。
　数年ぶりに寄越してきたメールも相変わらず素っ気ない文面だったし、ああ変わってないんだな、なんて甘いことを考えたのも、やっぱりちょっとした憐憫だったんだろう。最後の憐憫だ。俺があいつにかけた最後の情けだ。

『———猿比古、俺どうしたら良いのかな』

ぶつりと何かが切れる音がした。
　本当に切れていたのかもしれない。噛み締めた唇の裏側か、どこかの血管か。ぶつっと。切れてしまった。

「甘えんなよ」

思った以上に冷めた声が出た。
　呆れも怒りも何もかも通り越して、ただ冷たいだけの声が。

「……猿比古……？」
「それともお前は一度捨てたものを拾い食いするぐらい意地汚い奴なのかよ、美咲」

そんな風に捨て犬みたいな顔をするな。反吐が出る。
　先に俺を捨てたのはお前だ。お前が、俺を、捨てたんだ。
　俺にはお前が必要だったし、きっとお前にも必要なんだと思ってた。そう信じてたけど、そうじゃなかったんだろ。お前には周防尊が居ればそれで良かったんだろ。仲間が、絆が、誇りがあれば他には何も要らなかったんだろ。明日を滅ぼすことなんか、どうでも良いって言ったくせに。そういう話をすること自体が下らないって、そう言ったくせに。

下らない。
　何もかも下らない。

「……なんでそんなに怒ってんのか、わかんねぇよ」

泣けば全部解決してくれるのか。ガキか。幼稚園児か。優しい保母さんが来るまでそうやって泣き倒すか。泣けば俺が許すとでも思ったのか。馬鹿だろ、お前。

「怒ってる？　違うだろ。単に昔とは何もかも変わっちまっただけのことだ」
「わかんねぇよ。何もわかんねぇよ。十束さんも尊さんも居ねぇし、草薙さんだって、もう、」

吠舞羅はどこにもないのだと、襟を掴みながら唸った。

一度壊れたものは二度と元に戻らないのだ、と頭の片隅でひどく冷静な自分が言った。
　壊れたものをどうにかしようとすればするほど余計にひどく壊れていく。
　もう何も言うなよ。
　どうにもならないんだよ。
　お前は馬鹿だからわかんないかもしんねぇけど、砂の城は欠けたところからざらざらと崩れる。

だからな、美咲。

「———俺の八田美咲を穢すな」

（2013 7/15（12/8再録）　八田さん一回ぐらい痛い目みとくべきかなって）

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