日本ファンタジーノベル大賞



第十二回日本ファンタジーノベル大賞


第12回「日本ファンタジーノベル大賞」の選考会は、荒俣宏、井上ひさし、椎名誠、鈴木光司、矢川澄子の五委員により、平成12年7月28日、東京千代田区のクラブ関東において開かれました。
その結果、全応募作422篇から選ばれた下記最終候補作品4篇のうち、下の作品が優秀賞に、大賞はなしと決定しました。




受賞作品


優秀賞

「仮想の騎士」 斉藤直子


受賞のことば


トランスヴェスタイトのスパイ、死なない錬金術師、ワールドフェイマス女衒、メカニカル催眠術師……これらの奇妙な人々が同時代人と気付いたときの驚きが、この作品の原点でした。それぞれの年表をリンクさせて妄想するのは楽しいったらなかったです。そのうえに、こんな賞まで戴いて。一位不在の二位というポジションは、力不足を大いに恥ずべきところですが、やっぱり大喜びしてしまいました。本当にありがとうございました。


選評


荒俣宏  井上ひさし  椎名誠  鈴木光司  矢川澄子



候補作品


涙姫 奥野道々
仮想の騎士 斉藤直子
こいわらい 松之宮ゆい
場違いな工芸品 大濱真対

選考委員


荒俣宏 アラマタ・ヒロシ

1947(昭和22)年、東京都生れ。作家、翻訳家、博物学・幻想文学・神秘学研究家、風水師。慶應義塾大学法学部卒業後、日魯漁業に入社。コンピュータ・プログラマーとしてサラリーマン生活を送るかたわら、雑誌「幻想と怪奇」を編集。英米幻想文学の翻訳・評論と神秘学研究を続ける。1987年、『帝都物語』で日本SF大賞を受賞。1989年、『世界大博物図鑑第2巻・魚類』でサントリー学芸賞受賞。テレビのコメンテーターなどとしても活躍中。



井上ひさし イノウエ・ヒサシ

(1934-2010)山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した。2004(平成16)年に文化功労者、2009年には日本藝術院賞恩賜賞を受賞した。1984(昭和59)年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行った。



椎名誠 シイナ・マコト

1944(昭和19)年、東京生れ。作家、写真家。私小説、SF小説、随筆、紀行文、写真集など、幅広く作品を手がける。『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。著書に、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』などの自伝的小説、『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』などのSF作品、「わしらは怪しい探険隊」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズなどの紀行エッセイ、『全日本食えば食える図鑑』『国境越え』などの写文集が多数。近著に『三匹のかいじゅう』がある。



鈴木光司 スズキ・コウジ

1957(昭和32)年、静岡県浜松市生れ。1990(平成2)年『楽園』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。1991年に刊行された『リング』が圧倒的に支持され、その続編『らせん』で吉川英治文学新人賞を受賞。二作に続く『ループ』『バースデイ』シリーズの他に『仄暗い水の底から』『生と死の幻想』『家族の絆』『シーズ ザ デイ』『神々のプロムナード』などがある。



矢川澄子 ヤガワ・スミコ

(1930.7-2002.5)東京生まれ、東京女子大、学習院大卒。詩集『ことばの国のアリス』他、小説『失われた庭』他、エッセイ『野溝七生子というひと』他など幅広く活躍。また『雪のひとひら』『サーカス物語』『ぞうのババール』『不思議の国のアリス』などのファンタジー、児童文学の名訳者として、澁澤龍彦の最初の夫人であり、谷川雁の晩年のパートナーであった神秘的な女性として広く知られた。



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