日本ファンタジーノベル大賞



第十四回日本ファンタジーノベル大賞


第14回「日本ファンタジーノベル大賞」の選考会は、荒俣宏、井上ひさし、小谷真理、椎名誠、鈴木光司の五委員により、平成14年7月30日、東京・千代田区のクラブ関東において開かれました。
その結果、全応募作418篇から選ばれた下記最終候補作品4篇のうち、下の作品が大賞および優秀賞に決まりました。




受賞作品


大賞

「ショート・ストーリーズ」 西崎憲
(「世界の果ての庭」に改題)


受賞者略歴


西崎憲(にしざき・けん)
1955年生まれ。音楽制作と翻訳に携わる。インディーズレーベル代表。編訳書に『英国短篇小説の愉しみ』(全三巻)などがある。



受賞の言葉


十代の頃から「意味」のマニアのようなところがあり、日々、世界の存在する意味だとか、恋人の意味だとか、今日のランチの意味だとか、そんなことをひたすら考えています。この小説のきっかけになったのは、四月二日の朝方の夢でした。漠然と女性であると察せられるその人は茫と私の前に立ち「応募しなさい」と言いました。二十九日間の危難と冒険をのりこえたこの不思議な小説が、どのような読者にどのような意味を齎すか、一読者に戻った私は楽しみでなりません。



優秀賞

「戒」 小山歩


受賞者略歴


小山 歩(おやま・あゆみ)
1980年2月4日、宮城県気仙沼市生まれ。2002年春、東北学院大学文学部史学科を卒業。専攻は民俗学だった。



受賞のことば


まず初めに、お礼をいいたい。友人たち。よくぞ愛想を尽かさずにだらしない私を助け続けてくれました。家族たち。よくぞ頼りない私を信頼し、大きな自由を与えたまま、見守り続けてくれました。ありがとう。
モラトリアムの終りにこの小説を書いた。見苦しく悩みながらも進路を見つけていく主人公に自分を重ねたいと思った。小説は終ったが、私は宙ぶらりんな気もちのままだ。自分に何ができるのかも判らない。
「書くことでさがせ」と、この賞は、背中を押してくれたように思う。



選評


荒俣宏  井上ひさし  小谷真理  椎名誠  鈴木光司



候補作品


小山歩
喜劇のなかの喜劇――南の国のシェイクスピア 泉慶一
天受売(アマノウヅメ)の憂欝(ユーウツ) 中島文華
ショート・ストーリーズ

※改題「世界の果ての庭」
西崎憲

選考委員


荒俣宏 アラマタ・ヒロシ

1947(昭和22)年、東京都生れ。作家、翻訳家、博物学・幻想文学・神秘学研究家、風水師。慶應義塾大学法学部卒業後、日魯漁業に入社。コンピュータ・プログラマーとしてサラリーマン生活を送るかたわら、雑誌「幻想と怪奇」を編集。英米幻想文学の翻訳・評論と神秘学研究を続ける。1987年、『帝都物語』で日本SF大賞を受賞。1989年、『世界大博物図鑑第2巻・魚類』でサントリー学芸賞受賞。テレビのコメンテーターなどとしても活躍中。



井上ひさし イノウエ・ヒサシ

(1934-2010)山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した。2004(平成16)年に文化功労者、2009年には日本藝術院賞恩賜賞を受賞した。1984(昭和59)年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行った。



小谷真理 コタニ・マリ

1958(昭和33)年、富山県生れ。評論家。フェミニズム的な観点に基づくSF・ファンタジー評論の第一人者として活発な活動を続けている。1992年、共訳書『サイボーグ・フェミニズム』で第2回日本翻訳大賞思想部門受賞。1994年、『女性状無意識―女性SF論序説―』で第15回日本SF大賞受賞。近著に『テクノゴシック』『星のカギ、魔法の小箱―小谷真理のファンタジー&SF案内―』などがある。



椎名誠 シイナ・マコト

1944(昭和19)年、東京生れ。作家、写真家。私小説、SF小説、随筆、紀行文、写真集など、幅広く作品を手がける。『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。著書に、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』などの自伝的小説、『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』などのSF作品、「わしらは怪しい探険隊」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズなどの紀行エッセイ、『全日本食えば食える図鑑』『国境越え』などの写文集が多数。近著に『三匹のかいじゅう』がある。



鈴木光司 スズキ・コウジ

1957(昭和32)年、静岡県浜松市生れ。1990(平成2)年『楽園』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。1991年に刊行された『リング』が圧倒的に支持され、その続編『らせん』で吉川英治文学新人賞を受賞。二作に続く『ループ』『バースデイ』シリーズの他に『仄暗い水の底から』『生と死の幻想』『家族の絆』『シーズ ザ デイ』『神々のプロムナード』などがある。



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