日本ファンタジーノベル大賞



第十七回日本ファンタジーノベル大賞


第17回「日本ファンタジーノベル大賞」の選考会は、荒俣宏、井上ひさし、小谷真理、鈴木光司の四委員により、平成17年7月28日、東京・千代田区のクラブ関東において開かれました(椎名誠委員は欠席)。
その結果、全応募作488篇から選ばれた下記最終候補作品4篇のうち、下の作品が大賞に決まりました。




受賞作品


大賞

「金春屋ゴメス」 西條奈加


受賞者略歴


西條奈加
(さいじょう・なか)
1964年11月9日北海道生まれ。帯広市立三条高等学校卒業。
現在、貿易会社に勤務。



受賞のことば


数年前から江戸という時代に惹かれ、それが昂じて思いついたストーリーでしたが、構想段階ですでに、いまの自分には手に負えない設定だと後悔する羽目に陥りました。自身の力不足と向き合いながらもひたすら考え続け、どうにか脱稿に漕ぎ着けたのは、登場人物たちの功労が大きく、途中で投げ出そうとするたびに、よくど突き回してくれました。今回の受賞は思いがけない幸運でしたが、数々の欠点と無謀な設定にもかかわらず賞に選んでくださった諸先生方の度量の広さに、あらためて頭が下がる思いです。今後への励ましと受け取り、この先書き続けて行くための大きな支えとさせていただきます。


選評


荒俣宏  井上ひさし  小谷真理  椎名誠  鈴木光司



候補作品


金春屋ゴメス 西條奈加
天上の庭 光の時刻 水町夏生
愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ 琴音
琥珀ワッチ 斎木香津

選考委員


荒俣宏 アラマタ・ヒロシ

1947(昭和22)年、東京都生れ。作家、翻訳家、博物学・幻想文学・神秘学研究家、風水師。慶應義塾大学法学部卒業後、日魯漁業に入社。コンピュータ・プログラマーとしてサラリーマン生活を送るかたわら、雑誌「幻想と怪奇」を編集。英米幻想文学の翻訳・評論と神秘学研究を続ける。1987年、『帝都物語』で日本SF大賞を受賞。1989年、『世界大博物図鑑第2巻・魚類』でサントリー学芸賞受賞。テレビのコメンテーターなどとしても活躍中。



井上ひさし イノウエ・ヒサシ

(1934-2010)山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した。2004(平成16)年に文化功労者、2009年には日本藝術院賞恩賜賞を受賞した。1984(昭和59)年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行った。



小谷真理 コタニ・マリ

1958(昭和33)年、富山県生れ。評論家。フェミニズム的な観点に基づくSF・ファンタジー評論の第一人者として活発な活動を続けている。1992年、共訳書『サイボーグ・フェミニズム』で第2回日本翻訳大賞思想部門受賞。1994年、『女性状無意識―女性SF論序説―』で第15回日本SF大賞受賞。近著に『テクノゴシック』『星のカギ、魔法の小箱―小谷真理のファンタジー&SF案内―』などがある。



椎名誠 シイナ・マコト

1944(昭和19)年、東京生れ。作家、写真家。私小説、SF小説、随筆、紀行文、写真集など、幅広く作品を手がける。『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。著書に、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』などの自伝的小説、『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』などのSF作品、「わしらは怪しい探険隊」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズなどの紀行エッセイ、『全日本食えば食える図鑑』『国境越え』などの写文集が多数。近著に『三匹のかいじゅう』がある。



鈴木光司 スズキ・コウジ

1957(昭和32)年、静岡県浜松市生れ。1990(平成2)年『楽園』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。1991年に刊行された『リング』が圧倒的に支持され、その続編『らせん』で吉川英治文学新人賞を受賞。二作に続く『ループ』『バースデイ』シリーズの他に『仄暗い水の底から』『生と死の幻想』『家族の絆』『シーズ ザ デイ』『神々のプロムナード』などがある。



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