日本ファンタジーノベル大賞



第十八回日本ファンタジーノベル大賞


第18回「日本ファンタジーノベル大賞」の選考会は、荒俣宏、小谷真理、椎名誠、鈴木光司の四委員により、平成18年7月25日、東京・千代田区のクラブ関東において開かれました(井上ひさし委員は欠席)。
その結果、全応募作379篇から選ばれた下記最終候補作品4篇のうち、下の作品が大賞および優秀賞に決まりました。




受賞作品


大賞

「僕僕先生」 仁木英之


受賞者略歴


仁木英之(にき・ひでゆき)
1973年4月17日大阪府生まれ。信州大学人文学部卒業。現在、学習塾経営。



受賞のことば


一目会ったその日から、恋の花咲くこともある。私の大好きな言葉です。一昨年、初めて文章を紡ぎ出した瞬間から、物語を作ること自体と恋に落ちました。
今年に入ってふと心の中に芽を出した僕僕先生というごく短いお話。そこから生まれ出てきた登場人物や物語と、私は次々に恋に落ちました。彼らの魅力を文章にする作業に、ただのめりこんでいました。今ここに一つの果実を得ることが出来ましたこと、誠に素晴らしい恋の結末であると心から感謝しております。そして願わくば、これからも読者の皆様に恋心を抱いてもらえるような物語とキャラクターを生み出していきたい。その目標に向かって研鑽する所存であります。




優秀賞

「闇鏡」 堀川アサコ


受賞者略歴


堀川アサコ(ほりかわ・あさこ)
1964年7月20日青森県生まれ。青森県立青森高等学校卒業。現在、会社員。



受賞のことば


大好きな「遠野物語」に「マヨヒガ」という、おトクで素敵なエピソードがあります。これは、山中を迷っているうちに、何かの偶然や因縁で出会う無人の屋敷なのだ、とか。辿り着いた人はそこで大層贅沢な時間を過ごし、マヨヒガから一寸したお土産を持ち帰ると必ず幸福になるそうです。
書店や図書館の書架の中に探し続けていた本を見つけた時、私はこのマヨヒガに出くわした人の気持ちを実感します。或いは、物語を書きながら無心で架空の世界に遊んでいる時もまた、このマヨヒガに辿り着いている様に思うのです。
こうして拵えた私の小説が、いつか誰かの不思議で幸福な場所になってくれたなら――これにまさる喜びはありません。



選評


荒俣宏  井上ひさし(今回欠席)  小谷真理  椎名誠  鈴木光司



候補作品


カッパドキア・ワイン 大原一穂
闇鏡 堀川アサコ
夜のユニコーン 松田哲也
僕僕先生 仁木英之

選考委員


荒俣宏 アラマタ・ヒロシ

1947(昭和22)年、東京都生れ。作家、翻訳家、博物学・幻想文学・神秘学研究家、風水師。慶應義塾大学法学部卒業後、日魯漁業に入社。コンピュータ・プログラマーとしてサラリーマン生活を送るかたわら、雑誌「幻想と怪奇」を編集。英米幻想文学の翻訳・評論と神秘学研究を続ける。1987年、『帝都物語』で日本SF大賞を受賞。1989年、『世界大博物図鑑第2巻・魚類』でサントリー学芸賞受賞。テレビのコメンテーターなどとしても活躍中。



井上ひさし イノウエ・ヒサシ

(1934-2010)山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した。2004(平成16)年に文化功労者、2009年には日本藝術院賞恩賜賞を受賞した。1984(昭和59)年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行った。



小谷真理 コタニ・マリ

1958(昭和33)年、富山県生れ。評論家。フェミニズム的な観点に基づくSF・ファンタジー評論の第一人者として活発な活動を続けている。1992年、共訳書『サイボーグ・フェミニズム』で第2回日本翻訳大賞思想部門受賞。1994年、『女性状無意識―女性SF論序説―』で第15回日本SF大賞受賞。近著に『テクノゴシック』『星のカギ、魔法の小箱―小谷真理のファンタジー&SF案内―』などがある。



椎名誠 シイナ・マコト

1944(昭和19)年、東京生れ。作家、写真家。私小説、SF小説、随筆、紀行文、写真集など、幅広く作品を手がける。『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。著書に、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』などの自伝的小説、『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』などのSF作品、「わしらは怪しい探険隊」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズなどの紀行エッセイ、『全日本食えば食える図鑑』『国境越え』などの写文集が多数。近著に『三匹のかいじゅう』がある。



鈴木光司 スズキ・コウジ

1957(昭和32)年、静岡県浜松市生れ。1990(平成2)年『楽園』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。1991年に刊行された『リング』が圧倒的に支持され、その続編『らせん』で吉川英治文学新人賞を受賞。二作に続く『ループ』『バースデイ』シリーズの他に『仄暗い水の底から』『生と死の幻想』『家族の絆』『シーズ ザ デイ』『神々のプロムナード』などがある。



ページの先頭へ戻る