日本ファンタジーノベル大賞



第十九回日本ファンタジーノベル大賞


第19回「日本ファンタジーノベル大賞」の選考会は、荒俣宏、小谷真理、椎名誠、鈴木光司の四委員により、平成19年7月31日、東京・千代田区のクラブ関東において開かれました(井上ひさし委員は欠席)。
その結果、全応募作456篇から選ばれた下記最終候補作4篇のうち、下の作品が大賞および優秀賞に決まりました。両作品は11月に小社より刊行される予定です。




受賞作品


大賞

「厭犬伝」 弘也英明


受賞者略歴


弘也英明(ひろや・ひであき)
1982年9月20日神奈川県生まれ。立教大学文学部卒業。現在、会社員。



受賞のことば


今回試みたのは90年代のガキと大人もどきのガキの社交場でのやり取りをインチキ時代劇風にミキシングしてみるという作業でしたのですが……。
出力結果はどうだったのでしょう? ディテールの致命的な不足をファンタジーの自由度を悪用しつつ誤魔化したジャンク的な物語になってはいないでしょうか? 不安ではありますが判断は皆さんにお任せします。
しかしですね、やはり伝統のファンタジーノベル大賞にて賞を頂けた事は私のような未成熟な人間にとりましては身に余る光栄ですよね。本当に有難うございました。
後、ちなみに犬嫌いの話じゃないんで……。




優秀賞

「ブラック・ジャック・キッド」 久保寺健彦


受賞者略歴


久保寺健彦(くぼでら・たけひこ)
1969年1月27日東京都足立区生まれ。早稲田大学大学院日本文学研究科修士課程中退。



受賞のことば


この小説は六話連作ですが、初めは一話分のささやかな短編で終わるはずでした。しかし、読んでもらった知人から、もっと展開したら面白くなるんじゃないかとアドバイスを受けて、方向性が定まらないまま書き始めたところ、思いがけず世界が広がりました。それは、そもそもの執筆のきっかけになった、『ブラック・ジャック』の力によるところが大きいと思います。子供時代、ぼくはこのマンガが本当に好きでした。何十年ぶりかで全巻読み直して痛感したのが、名作は生命力を失わない、ということ。大人の目で改めて接した時、新鮮な発見がいくつもあって、感動はいっそう深まりました。
同じ創作者として、ぼくもそういう作品を生み出せるよう、精いっぱい努力していくつもりです。



選評


荒俣宏  井上ひさし(今回欠席)  小谷真理  椎名誠  鈴木光司



候補作品


厭犬伝 弘也英明
ブラック・ジャック・キッド 久保寺健彦
カラクリ猫と時間旅行代理店 和田吉里
菊香忌 藤田真幸

選考委員


荒俣宏 アラマタ・ヒロシ

1947(昭和22)年、東京都生れ。作家、翻訳家、博物学・幻想文学・神秘学研究家、風水師。慶應義塾大学法学部卒業後、日魯漁業に入社。コンピュータ・プログラマーとしてサラリーマン生活を送るかたわら、雑誌「幻想と怪奇」を編集。英米幻想文学の翻訳・評論と神秘学研究を続ける。1987年、『帝都物語』で日本SF大賞を受賞。1989年、『世界大博物図鑑第2巻・魚類』でサントリー学芸賞受賞。テレビのコメンテーターなどとしても活躍中。



井上ひさし イノウエ・ヒサシ

(1934-2010)山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した。2004(平成16)年に文化功労者、2009年には日本藝術院賞恩賜賞を受賞した。1984(昭和59)年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行った。



小谷真理 コタニ・マリ

1958(昭和33)年、富山県生れ。評論家。フェミニズム的な観点に基づくSF・ファンタジー評論の第一人者として活発な活動を続けている。1992年、共訳書『サイボーグ・フェミニズム』で第2回日本翻訳大賞思想部門受賞。1994年、『女性状無意識―女性SF論序説―』で第15回日本SF大賞受賞。近著に『テクノゴシック』『星のカギ、魔法の小箱―小谷真理のファンタジー&SF案内―』などがある。



椎名誠 シイナ・マコト

1944(昭和19)年、東京生れ。作家、写真家。私小説、SF小説、随筆、紀行文、写真集など、幅広く作品を手がける。『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。著書に、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』などの自伝的小説、『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』などのSF作品、「わしらは怪しい探険隊」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズなどの紀行エッセイ、『全日本食えば食える図鑑』『国境越え』などの写文集が多数。近著に『三匹のかいじゅう』がある。



鈴木光司 スズキ・コウジ

1957(昭和32)年、静岡県浜松市生れ。1990(平成2)年『楽園』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。1991年に刊行された『リング』が圧倒的に支持され、その続編『らせん』で吉川英治文学新人賞を受賞。二作に続く『ループ』『バースデイ』シリーズの他に『仄暗い水の底から』『生と死の幻想』『家族の絆』『シーズ ザ デイ』『神々のプロムナード』などがある。



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