日本ファンタジーノベル大賞



第二十二回日本ファンタジーノベル大賞


第22回「日本ファンタジーノベル大賞」の選考会は、荒俣宏、小谷真理、椎名誠、鈴木光司の四委員により、平成22年7月29日、東京・千代田区のクラブ関東において開かれました。その結果、全応募作670篇から選ばれた下記最終候補作4篇のうち、下の2作品が大賞・優秀賞に決まりました。両作品は11月に小社より刊行される予定です。



受賞作品


大賞

「前夜の航跡」 紫野貴李
(「わだつみの鎮魂歌」を改題)


受賞者略歴


紫野貴李(しの・きり)
1960(昭和35)年、埼玉県生まれ。埼玉県立川越女子高等学校卒業。埼玉県狭山市在住。



受賞のことば


二〇〇五年来、毎年この文学賞に応募してきました。六度目にして初めて最終候補になり、いきなりの大賞受賞ですので、すぐには信じられませんでした。正直言えば、滑稽なことに、過去の経験から、この作品も一次予選で落ちそうという、妙な自信がありました。
私の文学賞への挑戦は、作品を投函した翌日から次回の投稿に向けて始動する、という姿勢なのですが、来年の挑戦のために、この賞に向けた物語を模索している最中に、いただいた栄誉でした。
ほかの候補作の作者が私の作品を読んで、これなら、大賞に納得するという小説であれば、嬉しく思います。文学賞への挑戦には終わりがありません。このたびの受賞は、「素人でもこれくらいは書ける」というアピールになったと思います。




優秀賞

「月のさなぎ」 石野 晶
(「しずかの海」を改題)


受賞者略歴


石野晶(いしの・あきら)
本名:泉田洋子(いずみだ・ようこ)
1978(昭和53)年、岩手県生まれ。岩手県立伊保内高等学校卒業。岩手県九戸郡在住。



受賞のことば


小説を書くということは、編み物に似ていると思うことがあります。言葉という糸を選んで、ひと編みひと編みていねいに自分の魂をこめるような思いで時間をかけて編みこんだ作品。その作品が今回このような賞を頂いたことで、努力は裏切らないのだということを痛感しました。この小説が読み手の皆様にどのように受け止められるのか、怖いような楽しみなような気持ちですが、誰かの記憶の片隅にこの小説の風景が刻みこまれたなら本望です。
本はいつでも私に見知らぬ世界を教えてくれ、勇気と感動を与えてくれました。何冊もの本との出会いが今の私に繋がっています。読んだ人が幸せな時間を過ごせるような小説を、これからも書き続けていけたらと思っています。



選評


荒俣宏  小谷真理  椎名誠  鈴木光司



候補作品


しずかの海

※「月のさなぎ」に改題
石野晶
わだつみの鎮魂歌

※「前夜の航跡」に改題
紫野貴李
外法居士KA・SIN 神護かずみ
ホール・ショベル~ある穴掘りの物語~ 浅利進

選考委員


※井上ひさし先生は2010年4月9日にお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

荒俣宏 アラマタ・ヒロシ

1947(昭和22)年、東京都生れ。作家、翻訳家、博物学・幻想文学・神秘学研究家、風水師。慶應義塾大学法学部卒業後、日魯漁業に入社。コンピュータ・プログラマーとしてサラリーマン生活を送るかたわら、雑誌「幻想と怪奇」を編集。英米幻想文学の翻訳・評論と神秘学研究を続ける。1987年、『帝都物語』で日本SF大賞を受賞。1989年、『世界大博物図鑑第2巻・魚類』でサントリー学芸賞受賞。テレビのコメンテーターなどとしても活躍中。



井上ひさし イノウエ・ヒサシ

(1934-2010)山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した。2004(平成16)年に文化功労者、2009年には日本藝術院賞恩賜賞を受賞した。1984(昭和59)年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行った。



小谷真理 コタニ・マリ

1958(昭和33)年、富山県生れ。評論家。フェミニズム的な観点に基づくSF・ファンタジー評論の第一人者として活発な活動を続けている。1992年、共訳書『サイボーグ・フェミニズム』で第2回日本翻訳大賞思想部門受賞。1994年、『女性状無意識―女性SF論序説―』で第15回日本SF大賞受賞。近著に『テクノゴシック』『星のカギ、魔法の小箱―小谷真理のファンタジー&SF案内―』などがある。



椎名誠 シイナ・マコト

1944(昭和19)年、東京生れ。作家、写真家。私小説、SF小説、随筆、紀行文、写真集など、幅広く作品を手がける。『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。著書に、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』などの自伝的小説、『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』などのSF作品、「わしらは怪しい探険隊」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズなどの紀行エッセイ、『全日本食えば食える図鑑』『国境越え』などの写文集が多数。近著に『三匹のかいじゅう』がある。



鈴木光司 スズキ・コウジ

1957(昭和32)年、静岡県浜松市生れ。1990(平成2)年『楽園』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。1991年に刊行された『リング』が圧倒的に支持され、その続編『らせん』で吉川英治文学新人賞を受賞。二作に続く『ループ』『バースデイ』シリーズの他に『仄暗い水の底から』『生と死の幻想』『家族の絆』『シーズ ザ デイ』『神々のプロムナード』などがある。



ページの先頭へ戻る