日本ファンタジーノベル大賞



第二十三回日本ファンタジーノベル大賞


第23回「日本ファンタジーノベル大賞」の選考会は、荒俣宏、小谷真理、椎名誠、鈴木光司、萩尾望都の五委員により、平成23年7月28日、東京・千代田区のクラブ関東において開かれました。その結果、全応募作695篇から選ばれた下記最終候補作4篇のうち、下の2作品が大賞・優秀賞に決まりました。両作品は11月に小社より刊行される予定です。



受賞作品


大賞

「さざなみの国」 勝山海百合


受賞者略歴


勝山海百合(かつやま・うみゆり)
1967(昭和42)年1月、岩手県生まれ、44歳。女性。神奈川県川崎市幸区在住。作家。2006(平成18)年、「軍馬の帰還」で第四回ビーケーワン怪談大賞受賞。2007(平成19)年、「竜岩石」で第二回『幽』怪談文学賞短篇部門優秀賞受賞。著書に『竜岩石とただならぬ娘』(MF文庫ダ・ヴィンチ)、『玉工乙女』(早川書房)など。



受賞のことば


拙作に賞をいただきありがとうございます。長く憧れの賞でしたが、長篇が書けず、デビューは短篇小説でした。昨年、初めての長篇を上梓したあと、勘が鈍らないよう長篇を書き始め、せっかくなので今まで眺めるだけだった高い峰に挑むことに決めました。書いているさなか、東北地方を地震と大津波が襲い、関東に暮らす私の生活にも影響を及ぼし、動揺しましたが、止めたら後悔するとわかっていたので書き続けました。書き上げることが出来て良かったです。恩師でSF同人誌ボレアス主宰の菅原豊次氏(嬉野泉)が受賞を喜んでくれそうな気がしますが、石巻市にお住まいの氏は三月の津波でお亡くなりになり、その声を聞くことがないのが残念です。



優秀賞

「吉田キグルマレナイト」 日野俊太郎


受賞者略歴


日野俊太郎(ひの・しゅんたろう)
本名:澤田俊太郎(さわだ・しゅんたろう)
1977(昭和52)年4月22日、東京都八王子市生まれ、34歳。男性。2001(平成13)年、京都大学文学部卒業。滋賀県草津市在住。進学塾国語科講師。



受賞のことば


この作品は、私がまだ地球の平和を守っていた頃に共に戦ってきた人々の姿をモチーフとして書き綴ったものです。事実は小説より奇なりという言葉の通り、小説では語ることのできないような奇妙な道を今まで歩んできました。私の人生を通り過ぎた沢山の出会いと別れが、こうして小説という額縁に何とか収まり、私に作品を生み出す楽しさを教えてくれました。枠からはみ出さんばかりの真実を確かな言葉で紡げるようこれからも精進して参ります。今までの出会いと別れに感謝。


選評


荒俣宏  小谷真理  椎名誠  鈴木光司  萩尾望都



候補作品


残像の扉 青水洸
逃げ街フェヌセ 高野丹生
吉田キグルマレナイト 日野俊太郎
さざなみの国 勝山海百合

選考委員


荒俣宏 アラマタ・ヒロシ

1947(昭和22)年、東京都生れ。作家、翻訳家、博物学・幻想文学・神秘学研究家、風水師。慶應義塾大学法学部卒業後、日魯漁業に入社。コンピュータ・プログラマーとしてサラリーマン生活を送るかたわら、雑誌「幻想と怪奇」を編集。英米幻想文学の翻訳・評論と神秘学研究を続ける。1987年、『帝都物語』で日本SF大賞を受賞。1989年、『世界大博物図鑑第2巻・魚類』でサントリー学芸賞受賞。テレビのコメンテーターなどとしても活躍中。



小谷真理 コタニ・マリ

1958(昭和33)年、富山県生れ。評論家。フェミニズム的な観点に基づくSF・ファンタジー評論の第一人者として活発な活動を続けている。1992年、共訳書『サイボーグ・フェミニズム』で第2回日本翻訳大賞思想部門受賞。1994年、『女性状無意識―女性SF論序説―』で第15回日本SF大賞受賞。近著に『テクノゴシック』『星のカギ、魔法の小箱―小谷真理のファンタジー&SF案内―』などがある。



椎名誠 シイナ・マコト

1944(昭和19)年、東京生れ。作家、写真家。私小説、SF小説、随筆、紀行文、写真集など、幅広く作品を手がける。『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。著書に、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』などの自伝的小説、『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』などのSF作品、「わしらは怪しい探険隊」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズなどの紀行エッセイ、『全日本食えば食える図鑑』『国境越え』などの写文集が多数。近著に『三匹のかいじゅう』がある。



鈴木光司 スズキ・コウジ

1957(昭和32)年、静岡県浜松市生れ。1990(平成2)年『楽園』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。1991年に刊行された『リング』が圧倒的に支持され、その続編『らせん』で吉川英治文学新人賞を受賞。二作に続く『ループ』『バースデイ』シリーズの他に『仄暗い水の底から』『生と死の幻想』『家族の絆』『シーズ ザ デイ』『神々のプロムナード』などがある。



萩尾望都 ハギオ・モト

1949(昭和24)年、福岡県生れ。漫画家。1969年「ルルとミミ」でデビュー。以後、SF、ファンタジー、ミステリーなど幅広い作品ジャンルで活躍を続けている。1976年『11人いる!』『ポーの一族』で第21回小学館漫画賞受賞。1997(平成9)年『残酷な神が支配する』で第1回手塚治虫文化賞優秀賞受賞。2006年『バルバラ異界』で第27回日本SF大賞受賞。2010年に米国にてインクポット賞を受賞、2011年、第40回日本漫画協会賞・文部科学大臣賞を受賞。



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