広島、J1連覇の原動力とは…一貫した強化方針がベースに

関連キーワード J1,広島
J1連覇を達成した広島 [写真]=浦正弘
JSK

Jリーグサッカーキング
11月22日発売号

購入する

詳細を見る

 35分、フワリと浮かせてGKを外したシュートが、鹿島のゴールネットを揺らす。80分にも、見事な追加点。石原直樹の2得点で、広島が勝利を収め、連覇を誇る凱歌がカシマスタジアムに響き渡ることとなった。

 なぜ予算的には中規模クラブに過ぎない広島がJリーグを連覇できたのか。その理由は複数あるだろうが、一つは「石原」だろう。正確には「石原のような選手」。より正確に言えば、「石原のような選手を獲ってきた強化部」こそが、連覇の原動力である。

 石原は今季33試合に出場して10得点。佐藤寿人の個性を活かしつつ、自分も活かされるという職務を遂行し続けた。大宮からの移籍初年度だった昨季も「陰のMVP」と言われる働きぶりだったが、今季は佐藤がMVPを獲得した昨季ほどの活躍とはいかない中で(と言っても、FWとして及第点の結果は出しているが)、貴重な働きを見せ続けたシーズンだった。

 大宮での石原は、いわゆる“スーパーサブ”。レギュラーとして稼働していた時期に日本代表の予備登録メンバーに入るほどのパフォーマンスを見せていただけに、内心で思うところはあったのだろう。広島移籍の経緯はそんなところに透けて見えるが、そういう選手を狙い撃てるのが、広島強化部の眼力である。

 漠としたイメージとして「広島はユースから育てた選手が躍動して強くなった」というものがある。確かに森崎和幸、浩司、そして高萩洋次郎といったユース出身選手の存在なしに今回の連覇は語れまい。ただ、今季の出場時間上位11人のうち、ユース育ちは2人だけ(森崎和、高萩)。外国人助っ人が1人(ミキッチ)で、高卒から育てた選手が1人(青山敏弘)、残る8人が他のJクラブから補強してきた選手であった。

 石原に象徴されるように、それらの選手はいずれも日本代表には引っ掛からないレベルの選手たち。入っても候補くらいか、あるいは「元代表」になってしまった選手たちである。たとえば、水本裕貴がそうだろう。また昨季はリベロの千葉和彦獲得が大当たり。千葉自身も東アジアカップの日本代表に選ばれるなど飛躍したが、決して高額の選手ではない。

 今季は浦和へ移籍していった森脇良太の穴を、水戸から前年に獲得していた塩谷司が、単に埋めるだけでなく山を付け加えるような働きを見せたが、これも森脇がいなくなる可能性まで見据えての補強だった。加えて、すべてがリーズナブル選手狙いというわけではなく、J2降格時の大分から獲得した西川周作のような例では、ピンポイントでは資金も投入している。

 日本人選手の技術的アベレージが向上し、代表に入っている選手と入っていない選手の差は小さくなった。ただ、「お値段」の差は結構ある。そういう時代感覚と広島の手法はよくマッチしているように思う。それも織田秀和強化部長が、経営陣の顔ぶれが変わっても強化部の主導権を握り続け、強化の方針が一貫しているからこそ。その間にJ2降格などを経ていることを思えば驚異的だが、そうでなければ数年先を見据えながらの補強策など、決してできはしない。

 広島の成功は、選手が引き抜かれていく宿命にある中小クラブにとって大切なことが、「選手を引き抜かれないようにすること」ではなく、「いかにチームに合う優秀な選手を(できれば安く)引き抜いてくるか」であることを教えてくれている。

文●川端暁彦

【関連記事】
<投票>日本代表はブラジルW杯でどこまで勝ち進めると思いますか?
鹿島撃破の広島が逆転優勝でJ1連覇を達成…首位の横浜FMは敗戦
広島が連覇達成…川崎が横浜FM撃破でACL出場権獲得/J1最終節
逆転でのリーグ連覇に涙の広島主将FW佐藤寿人「信じられない」
優勝に導く2得点の石原「毎年選手は替わるが、一丸で戦った結果」
関連キーワード: J1,広島

関連するおすすめ記事

この記事へのコメント コメント機能について

コメントを投稿する ※コメントの反映までに数分時間がかかります

残り 500 文字
  • 001
  • 2013-12-08 19:19:47
  • ID:gA9L3HLoX
広島は、カープもサンフレッチェも同じ。金が無いから工夫で勝負!関東のどっかのチームのようなやり方(野球もJリーグも)が本当のスポーツ発展の貢献とは思えない。むしろ悪い方に向かっているのでは??スポーツビジネス云々も強いチームが限られては、人気が低下するのだから、広島のやり方はいい方法と思う。ついでを言えば、監督がじっくり育てているのも広島のチームのやり方では。弱くなったらすぐ交代の多いJリーグのチームは、監督交代の度に代わる選手起用やシステム等々で一時強くなっても長続きしない。今、強くなるためのチームつくりについてもう一度考えてほしい。
  • +4
  • -5


フォトギャラリー

編集部おすすめRecommend

最新ニュース 記事一覧

注目コラム・インタビュー 記事一覧

最新の結果日程・結果へ

  • J1
  • J2
  • ENG
  • GER
  • ESP
  • ITA
新潟2-0名古屋
F東京2-0仙台
磐田3-1大分
鹿島0-2広島
川崎1-0横浜M
湘南0-1大宮
清水1-2
浦和2-5C大阪
甲府0-0鳥栖
福岡2-0岡山
札幌0-0北九州
鳥取2-2千葉
京都1-2栃木
富山1-2岐阜
松本1-0愛媛
山形0-0東京V
群馬1-1G大阪
神戸3-0熊本
長崎0-1徳島
横浜FC4-1水戸
フルアム試合中アストン・ヴィラ
サンダーランド1-2トッテナム
サウサンプトン1-1マンチェスター・C
ストーク3-2チェルシー
リヴァプール4-1ウェストハム
クリスタルパレス2-0カーディフ
WBA0-2ノリッジ
マンチェスター・U0-1ニューカッスル
フライブルク試合中ヴォルフスブルク
ドルトムント0-1レヴァークーゼン
シュトゥットガルト4-2ハノーファー
ブレーメン0-7バイエルン
ハンブルガーSV0-1アウクスブルク
フランクフルト1-2ホッフェンハイム
ボルシアMG2-1シャルケ
ニュルンベルク1-1マインツ
ビルバオ1-0バルセロナ
バレンシア3-0オサスナ
グラナダ1-2セビージャ
ベティス2-2ラージョ
エスパニョール1-2レアル・ソシエダ
R・マドリード4-0バジャドリード
セルタ3-1アルメリア
エルチェ0-2A・マドリード
カリアリ試合中ジェノア
ヴェローナ試合中アタランタ
サンプドリア試合中カターニア
トリノ試合中ラツィオ
サッスオーロ試合中キエーヴォ
ローマ2-1フィオレンティーナ
ナポリ3-3ウディネーゼ
リヴォルノ2-2ミラン

好評発売中!


イベント

PR情報

サムライサッカーキング最新号
サムライサッカーキング

サムライサッカーキング
12月号増刊 11月14日(木)発売
日本代表パーフェクトブック

780円
(税込)
ご注文はこちら
ワールドサッカーキング
ワールドサッカーキング

ワールドサッカーキング
10月18日(木)発売
90年代生まれ限定!!「新世代革命」

570円
(税込)
ご注文はこちら
Jリーグサッカーキング
Jリーグサッカーキング

Jリーグサッカーキング
1月号 11月22日(金)発売
サイン入りプレゼント多数!

780円
(税込)
ご注文はこちら
サッカーゲームキング
サッカーゲームキング

サッカーゲームキング
vol.23 11月22日(金)発売
向田茉夏さんの表紙が目印です!

980円
(税込)
ご注文はこちら
CALCIO2002
CALCIO2002

CALCIO2002
10月10日(木)発売
群雄割拠の7強時代再び

980円
(税込)
ご注文はこちら
浦和レッズマガジン
浦和レッズマガジン

浦和レッズマガジン
12月号 11月12日(火)発売
想いと力に

780円
(税込)
ご注文はこちら
Champions 日本語版

2013-2014ヨーロッパサッカーガイド 選手名鑑

9月11日(水)発売

980円
(税込)
ご注文はこちら
WCCF 10th Anniversary Book

バルセロナを極める11の視点
サッカー史上最強のクラブを再考するアンソロジー

5月21日(火)発売

1575円
(税込)
ご注文はこちら

ページのトップへ戻る