雑学の小径>一筆書にチャレンジ | |||||||
2009年5月20日作成 |
|||||||
一筆書にチャレンジ |
|||||||
今から約270年前のヨーロッパにおける出来事です。 プロイセン王国の首都であったケーニヒスベルク(現ロシア連邦カリーニングラード)を流れているプレーゲル川の中州に7つの橋が架かっていました。 街の人たちはこの7つの橋について、同じ橋を再び通ることなく、すべての橋を誰が一番最初に渡りきることができるか競い合っていました。 しかし、成功した人は一人も居ませんでした。 そしてある時、「すべての橋を重複せずに渡るのは不可能である」という答えを出した旅人がいました。 その旅人とは、スイス・バーゼルで生まれ、後に大数学者となった若き日のレオンハルト・オイラー(Leonhard Euler 1707-1783)でした。 |
|||||||
地図には6つの橋しか載っていませんが、下方に流れる川に7本目の橋が架かっています。(青く囲った部分) |
|||||||
図-1 ケーニヒスベルクの地図 |
|||||||
上の地図の橋を判り易く書くと下図の左側のようになります。 オイラーはこれらの橋を下図の右側のように陸を「点」に、橋を「線」に表わして一筆書きの図形に置き換え、不可能であることを証明したのです。 陸を一つの点に置き換えるという発想そのものが、天才たる所以なのでしょうが・・・。 |
|||||||
図-2 オイラーの発想 |
|||||||
一筆書きが可能な図形は、 「交わる線が奇数となる”点”が、0箇所あるいは2箇所の図形に限定される」 というものでした。 上の7つの橋は、奇数となる点が4か所ありますから、当然一筆書きはできません。
|
|||||||
|
|||||||
それでは、一筆書きにチャレンジしてみましょう。 |
|||||||
下図の(基本図)は代表的な一筆書きの図形ですが、似たような図形を挙げてみました。 原理を理解した皆さんには簡単でしょうが、トライしてみてください。 |
|||||||
図-3 一筆書き(基本編) |
|||||||
難問を出題します。 一見して無理だと思われるでしょうが、少し頭をひねってみてください。 (出題) 1枚の紙に円が二つ描かれています。これを一筆書きで書いてください。 ヒント:1枚の紙というのがミソです。黒板に書かれていたら一筆書きは出来ません。 |
|||||||
図-4 二重円出題図 |
|||||||
(解答)
|
|||||||
つまり、紙の裏側を使って図-cのように線分ABで大きい円と小さい円がつながった図形にするのです。 最初から図-cが問題として出されていれば簡単ですが、紙の表側だけでは永久に解けない問題でした。 |
|||||||
図-5 二重円解答図 |
|||||||
次の問題も、意外と難しいかもしれません。 |
|||||||
左図のように等間隔に並んでいる9つの点を連続した折れ線で一筆書きする時、最も少い本数は何本でしょうか? |
|||||||
図-6 出題図 |
|||||||
9つの点の範囲内だけで考えてしまうと、左図のように最少でも5本は必要となります。 ただし、これは正解ではありません。 |
|||||||
図-7 五本線 |
|||||||
9つの点の範囲にこだわらずに考えると、左図のように数字の1から順に4まで合計4本の折れ線で結ぶことができます。 とりあえず、これが正解です。 |
|||||||
図-8 四本線 |
|||||||
とりあえずというのは、あくまでも平面上(ユークリッド幾何学)での話だからです。 地球のような曲面上(非ユークリッド幾何学)でこの問題を解くと、答えは3本になってしまいます。 平面上では平行線は交わりませんが、地球のような曲面上では、どのように直線を引いても必ず交わってしまうので、3本で結ぶことができるのです。 地球儀の経度線をイメージしながら考えてみてください。 一列目の3点を通過した直線が北極点へ向かい、北極点で二列目の点を結ぶ直線に移ります。そして、二列目の3点を通過したら今度はその直線は南極点へ向かいます。そして、南極点で折り返して三列目の直線に移り三列目の3点を通過して完了です。 合計3本で済みました。 |
|||||||
図-9 三本線 |
|||||||
(解答3) ・・・ところが、本数がもっと少ない答があります。 円柱のような曲面上では9点を結ぶ直線は1本で済んでしまいます。 円柱にヒモを螺旋状に巻きつけ、その上に等間隔に9つの点をプロットすると下図のようになります。 つまり、ヒモ上の9つの点は当然一直線上に並んでいますが、円柱に巻きつけると3つの点が3列に並んでいる状態になるのです。 |
|||||||
図-10 一本線 |
|||||||
条件設定を一度リセットし、思考を柔軟にすることでいろいろなことが見えてきます。 |
|||||||
雑学の小径>一筆書にチャレンジ | |||||||