フィギュアスケート・グランプリ(GP)ファイナル(6日、マリンメッセ福岡)の男子フリーは、前日のショートプログラム(SP)で世界歴代最高得点を出し首位に立った羽生結弦(19=ANA)が193・41点、SPとの合計293・25点で初優勝した。世界選手権3連覇中の“絶対王者”パトリック・チャン(22=カナダ)を破り、ソチ五輪金メダルが見えてきたが、一方で難題も浮上している。
満面の笑みを見せながら羽生は「びっくりするような点数だったので、もっと頑張らないといけない。得点にふさわしい演技をしないといけないなと思った」。ソチ五輪出場へ大きく前進したうえ、五輪優勝予想で“鉄板”だったチャンに勝ったことで、金メダル候補に名乗りを上げた。
今後は21日からの全日本選手権(埼玉)で優勝し、五輪出場を確実にすることが目標。そのためにさらに調子を上げたいところだが、実はこの全日本こそが、ソチ五輪のメダル獲得へ思わぬ落とし穴になりかねない危険をはらんでいる。
今年の全日本はソチ五輪代表選考を兼ねるため、異様な重圧のなかで行われる。特に有力選手が勢ぞろいする男子は「日本は大変だろうね」と王者チャンが同情するほどだ。この戦いを勝ち抜くためには相当な精神力と労力が必要だが、これを乗り越えたとしてもわずか1か月少々でもっと大事な五輪本番がやって来てしまう。
「短期間にいくつも大会があると、ピークの持って行きかたが難しくなるもの」(フィギュア関係者)。一歩間違えれば全日本で力を使い果たし、ソチで調整失敗の可能性があるのだ。
しかも、羽生はバンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔(27=関大大学院)らベテランに比べ、若くて経験が少ない。スタミナや精神面のコントロールも課題とあって、2つの大舞台をうまく乗り切ることは決して簡単なことではない。
羽生を指導するブライアン・オーサー氏(51)も「羽生は闘争心も持ってるし、全日本選手権の戦いを心配はしていないが、その先のことも考え、ソチ五輪へも少し力を残してほしいと思う」と指摘。金メダル獲得へ、試練の2か月となりそうだ。
【関連記事】
福岡県北九州市小倉競輪場で開催された「第55回競輪祭」(GⅠ)は12月1日、決勝を行い、深谷知広(23)のカマシに乗った金子貴志(38)が差し切って優勝。今年は7月寛仁親王牌に続き、2個目のGⅠタイトルを手にした。