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【千葉】

「思想の自由、さらに制約」 自衛隊艦船修理に関わった松原さん

現役時代に着けていたバッジの絵を描き、当時を振り返る松原さん=富津市で

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 「思想の自由がない職場が、さらに厳しい状況になる」。五日に参院特別委員会で可決された特定秘密保護法案に対し、大手造船会社の従業員だった富津市の松原義昭さん(73)はこんな危惧を強める。自衛隊艦船の修理に関わった際、機密保持のための身辺調査に間近で接した経験から、法案が職場に与える影響を訴えた。 (白名正和)

 松原さんは東京都出身で、一九五六年に名前を聞けばだれもが知っている造船会社に養成工として入社。間もなく正社員となって東京都内にある工場に配属され、五十九歳で退職するまで自衛隊のフリゲート艦や護衛艦などの修理にもかかわった。

 機密保持が求められる職場では、艦船修理にかかわる作業員はバッジで色分けされていた。「機密性が高い順にあずき色、白、緑の三色で、入れる区画が制限される。現場の作業員が着けるのはほとんど白と緑だった」という。

 松原さんは五百円玉大で「秘」と書かれた緑バッジを渡され、仕事は艦船内部といっても配管やいすなど簡単な備品の修理。自衛隊以外の船では普段行っていた配線工事など重要な仕事は任せてもらえなかった。白バッジを与えられなかったのは「労働組合での活動などが影響したのだろう。肩身が狭かった」と当時を振り返る。

 白バッジの作業員には、緑バッジにはない適格判断のチェックもあった。三親等以内に労組の活動家や特定の政党員がいないか、会社に調べられたという。親しい白バッジの作業員から「困った。調査に引っかかった」と聞いたこともある。

 修理は自衛隊員と一緒に行うため、食堂で食事をともにし、隊員らと勤務後に飲酒することも多かった。

 特定秘密保護法案が成立すれば、こうした隊員との接触の際など「作業員にしてみれば何が秘密か分からず、罰則に対する恐怖心が大きくなる」。憲法に思想・信条の自由が保障されていることにも触れ「職場で息することもできなくなり、仕事にも差し支える。法案には絶対に反対だ」と話した。

 この大手造船会社の広報担当者は本紙の取材に「過去も現在も身辺調査は行っていない」としている。

<特定秘密と罰則> 特定秘密保護法案は「公務員以外の民間事業者も、適性評価で特定秘密を漏らす恐れがないと判断された場合は、特定秘密を取り扱う」「特定秘密を漏らせば懲役などに処する」と規定する。民間事業者から機密と知らずに情報を聞き、第三者に話した人も処罰の対象となる恐れがあり、批判が高まっている。

 

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