今、韓国軍の最新兵器の能力が、「独島(ドクト/日本名「竹島」)をめぐる日本との争いに使えるか」という“独島基準”をもとに決定されていることはほとんど知られていない。
元外務省主任分析官で作家の佐藤優(まさる)氏は、“独島基準”が存在する理由をこう説明する
「国家にとっての脅威は『能力』と『意思』によって構成されます。韓国は従来、日本には竹島を奪還する能力はあるものの、その意思はないと見てきた。ところが、2009年に日本の政権が民主党に代わり、『竹島に対して毅然(きぜん)たる態度を取る』という姿勢になった。能力と意思の両方が相手にあると判断すれば、それに対して防衛態勢を整えるのは当然です」
尖閣諸島における日本の立場で考えてみるとわかりやすい。以前から中国には尖閣を奪取する「意思」はあったが、海軍の「能力」が十分ではなかった。しかし、近年その能力が向上してきたことを受け、自衛隊は離島防衛態勢を強化しようとしている。
ただ、現時点で韓国が“実効支配”している竹島を自衛隊が強行奪還するというシナリオは、日本人の通常の感覚からすれば「あり得ない」ものだが……。
「北方領土のように当事国双方が領土問題の存在を認め、交渉が行なわれていれば、力=軍事による解決はあり得ない。しかし、片方(竹島なら韓国、尖閣なら日本)が領土問題の存在自体を認めていない状況では、力の発動によって事態を打開しようという誘惑に陥(おちい)ることはある――“疑いの論理”で動く国際政治においてはごく普通の考え方です」(佐藤氏)
この韓国の“独島基準”について、日本の立場で考えてみた場合はどうなるか。昨年8月、当時の李明博大統領が韓国大統領として史上初めて竹島に上陸するなど、兵器の「能力」に加えて対日本の「意思」も高まっているようにも見えるが?
元陸将で、かつて防衛武官として韓国に駐在した福山隆氏はこう分析する。
「父親の朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領が親日政策を取っていた反動で、現在の朴槿惠(パク・クネ)大統領は政権スタート時から反日姿勢を鮮明にする必要があったという事情もありますが、それにしても昨今の韓国の日本に対する敵愾心(てきがいしん)は異常。私の駐在時代(90年から93年)の日韓関係とは隔世の感があります。
この傾向から判断しても、やはり韓国が自衛隊の竹島侵攻に対する防衛作戦計画を具体的に構築している可能性は高いと思います」