サポーターから渡されたマフラーを手に声援に応える名古屋・ストイコビッチ監督=東北電力ビッグスワンスタジアムで(佐伯友章撮影)
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名古屋グランパスを6年間率いたドラガン・ストイコビッチ監督(48)のラストゲームは、新潟に0−2で完敗。11位で終えた。来季は、西野朗新監督(58)を迎えて出直す。勝てば優勝だった首位・横浜Mは川崎に0−1で敗れ、鹿島に勝った広島が逆転優勝。2年連続2度目のリーグ制覇を果たした。連覇は2007〜09年の鹿島以来4チーム目で通算5度目。後半戦に苦しみながらも、堅守で大混戦を制した。
◆新潟2−0名古屋
鬼門ビッグスワンに降り注いだ師走の雨に、コートをぬらすことすらしなかった。最後の指揮となったストイコビッチ監督が、ピッチサイドまで出て指示を送ったのは前半10分ごろまで。あとは達観したかのようにベンチに腰を下ろし、戦況を見つめた。この6年間で最低となる11位でのフィニッシュ。10月の退任発表から6試合を経て、もはやピクシーに最終戦を勝利で飾る気力は残っていなかった。
6年分の思いを込めた采配ができなかった。出場停止でDF闘莉王、負傷でFWケネディ、玉田と、こだわってきた10年優勝時の主力が軒並み欠場。FW田中輝、DF牟田ら若手を先発起用せざるを得なかった。さらに前日の移動でMFダニルソンが新幹線の時間に間に合っていながらホームで乗りそびれるという失態を犯し、この懲罰として若手のMF田口とMF磯村を急きょ先発に。前節のスタメンから4人入れ替わった急造チームにホーム8連勝中の新潟は止められなかった。
しかもそのダニルソンを、1点を追う後半27分にこらえきれずに投入。しかし2失点目に直結するミスを犯すなど、すべてが裏目に出た。「われわれはほぼ2軍のようなチームでした」と人ごとのように振り返ったが、若手を育て層の厚いチームをつくってこなかったツケを最後まで支払った。
それでも試合後は選手たちを握手で迎えた後、苦楽をともにしたコーチングスタッフとともにアウェーに詰め掛けたサポーターの前に出て、深々と頭を下げた。「名古屋だけにかかわらず、私のことを応援してくれた日本のみなさん、ありがとう」。驚き、歓喜、そして凋落(ちょうらく)と、ジェットコースターのような浮き沈みを見せたピクシーの6年。希代のカリスマはJ1通算103勝という記録以上に強烈な記憶を残し、初めて振るったタクトを置いた。 (宮崎厚志)
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