特定秘密保護法案をめぐって、臨時国会は最後の最後まで異常な状態が続いた。

 7月の参院選で衆参両院のねじれが解消して最初の国会だった。安倍政権は「成長戦略実行国会」だといっていたが、開けてみれば、目を覆うようなこの惨状となった。

 参院選後の長い休みをへて、国会の開会は10月中旬にずれ込んだ。短い会期に、国家戦略特区など多くの重要法案が詰め込まれた。

 最終盤になって混乱はきわまり、解任、不信任、問責の決議案が乱れ飛んだ。

 こんな国会を有権者は望んではいなかった。

 政権のブレーキ役を自任していた公明党は、参院選が終わると「ブレーキをかけるのが目的ではない。力をあわせて前進をはかるのが国民の期待だ」とギアを切り替えた。

 自民党の行き過ぎをただす役割より、与野党の合意形成をはかるほうが大事だ。そんな考えから、公明党は秘密保護法案の修正に応じ、かえって政権の背中を押した。

 だが、それは国会内の合意形成でしかない。公明党は広く国民の合意形成をめざすことなく、自民と強行採決を繰り返したことを恥じるべきだ。

 政府は、日本版NSCと呼ばれる国家安全保障会議と秘密保護の両法案はセットといいながら、参院選前に提出したのはNSC法案だけだった。世論の反発を恐れていたのは明らかだ。

 たしかに、安全保障上の秘密保護は「国家」の機能を強めることにはなるだろう。だが、それは一方で「国民」の権利を制約することにつながる。

 だからこそ、慎重のうえにも慎重な法案づくりと、異なる意見に耳を傾ける丁寧な国会審議が必要なはずだった。

 ところが首相は、予定された会期末の2日前になって「情報保全諮問会議」「保全監視委員会」「独立公文書管理監」と新チェック機関の設置を表明。野党に反発されると「情報保全監察室」の設置も加えた。

 まるで閉店まぎわの大安売りだ。それぞれの機能や相互の関係もはっきりしない。この有り様を見るだけで、これが欠陥法案だったことは明らかだ。

 国会を大幅延長できないというのは政権の勝手だ。それが出来ぬなら、せめて継続審議にすべきだった。なにより法案が抱える数々の問題を考えれば、廃案にしてしかるべきだった。

 国民の不安を切り捨て、異様な光景を残して臨時国会は事実上、閉幕した。