TPP 21年にシンガポールが交渉打診 鳩山政権、参加見送り
【シンガポール=坂本一之】環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に関し、シンガポール政府が平成21年10月、鳩山由紀夫政権に交渉参加を打診していたことが6日、分かった。
鳩山政権は検討したものの最終的に見送った。複数の関係者が明らかにした。7日からシンガポールで年内妥結に向けた閣僚会合が始まるが、参加をその時点で決断していれば、日本は交渉の主導権を握れた可能性が高かったとの見方が出ている。
関係者によると、21年10月に訪日したシンガポールのリー・シェンロン首相が、当時の鳩山首相や直嶋正行経済産業相らに交渉参加を要請した。当時のTPPの枠組みはシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国のみ。米国がまだ正式に参加していない段階だった。
鳩山首相らはシェンロン首相からTPPの狙いを「世界の経済自由化におけるルールメーキングが目的だ」と説明を受けていたという。しかし、即断できず、22年6月に札幌市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当相会合などで交渉参加を宣言する方向で政府内の調整を行った。
結局、関税を原則撤廃とするTPPへの反対論や、鳩山氏が中国や韓国との「東アジア共同体構想」に意欲を示していたこともあり、断念した。
米国は21年11月に正式に参加を表明、その後TPP交渉の主導権を握る立場になっている。日本の交渉筋は、日本が米国よりも前に交渉参加を決めていれば「米国と肩を並べて今よりも強い発言力を持つことができた」とみている。
昨年12月に発足した安倍晋三政権は当初、今年7月の参院選後に参加の是非を先送りすることも考えたが、今年3月、「自由化ルールの基準作りに参加して自国の意見を反映させることや、米国からの強い要請」を受けて交渉参加を決断した。
経産省幹部は「ギリギリのタイミングで、もっと遅ければ日本はルールメーキングから外されていた」としている。