岩手県洋野町の国民健康保険種市病院で、勤務する薬剤師の男(52)が医薬品を業者に横流ししていた問題は、薬剤師の世界の暗部を浮き彫りにした。男は15年間で1億7000万円もの大金を不正に取得したことが判明しているという。もっとも、業界にはこんなワルはまだまだいるというから驚かされる。患者に薬を処方する裏で、犯罪に手を染める一部薬剤師の“汚れた手口”とは――。
同院を運営する洋野町によると、薬剤師の男は1999年から薬の横流しを始めた。この年から薬剤師の有資格者が男だけになり、仕入れや在庫管理を1人で担当していた。監視が一切ない中で不正な副業を15年間も続けていた。
病院の薬を抜き取って段ボールに詰め、東京の卸売業者に発送。代金・報酬として毎月100万円もの金が男の口座に振り込まれていた。11月20日付で懲戒免職処分となった男は「生活費や遊興費に使った」と認めているが、着服したカネはほぼ使い果たしていた。
町の総務課の担当者は「10月末に病院へ税務調査がピンポイントで入ったことで横領が発覚しました。薬剤師を置かないと病院が回らないので、11月18日には新しい薬剤師さんに来てもらいました」と話す。町では刑事告訴とともに損害賠償請求訴訟も検討している。
今回のように巨額なのはレアケースだが、薬剤師業界では小遣い稼ぎに精を出す不届き者は確かに存在するという。事情通は「特に睡眠薬や向精神薬などをこっそり売りさばく薬剤師がいます」と話す。
売り渡す先は“ヤミの薬バイヤー”だ。彼らの手から、今度はドラッグジャンキーらに売られる。ジャンキーは本来の処方目的とは大きく異なり「薬でハイになる」ことを目的として服用するという。
かなり前から薬の流出が頻発したため、数年前から厚労省や薬剤師業界では医薬品の廃棄におけるルールを厳格化した。
「廃棄時に数を確かめることはもちろんですが、薬が詰められた箱や瓶のラベルまで裁断して捨てています」(ある薬剤師)
ラベルを裁断までするのには理由がある。
「中身はテキトーな丸薬だけど、それに『○○』という向精神薬のラベルだけ貼ってもジャンキーには売れる。いわゆるプラセボ(偽薬)効果だね」(先の事情通)。だから薬によってはラベルまでもが売れるのだ。
前出の薬剤師によれば“裏バイト”で横流しする薬は風邪薬や頭痛薬やED改善薬などポピュラーなもののほか「本来処方されるべきではない理由で使いたい薬」が売れるという。
たとえば「本来は肝臓の機能を高める薬だが、二日酔いのときに使いたい薬」などが売れ筋だという。
「虫刺されをなんとかしたくて、炎症を抑制するステロイド含有の薬を自分で飲んでみました。するとすぐに腫れが引いたんです。これは女性に売れると思います」(前同)。これも虫刺され程度では正式には処方されない薬だ。あきれた薬剤師だが、小遣い稼ぎ程度でもれっきとした犯罪行為だ。
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