再生エネ:悩む独英…高額買い取り、電気料金に転嫁
毎日新聞 2013年12月05日 08時10分
【ロンドン坂井隆之】太陽光や風力発電など再生可能エネルギー支援に力を入れているドイツと英国で、電力価格の上昇が大きな問題となっている。堅調な回復を続ける経済に悪影響を及ぼす懸念が出ており、政府も対応に頭を悩ませている。日本も再生エネの固定価格買い取り制度を2012年7月に開始したばかりで、対岸の火事とは言えないようだ。
◇「持続可能」の救世主、懐には厳しく?
ドイツは22年までの全原発停止と50年までに全電力の80%を再生エネで賄うとの目標を掲げている。再生エネで発電した電力を割高の固定価格で買い取り、電力市場で取引されている市場価格との差額を賦課金として利用者に転嫁している。だが、高額の買い取り価格目当てに太陽光発電などが急増した結果、賦課金の額は13年に前年比47%上昇。14年も同18%上昇する見込みだ。電力の業界団体は、電力料金にかかる13年の税金や賦課金が前年から3割強増え総額316億ユーロ(約4兆3300億円)に達すると指摘する。
ドイツのアルトマイヤー環境相は11月中旬、再生エネ支援制度見直しの必要性を認めた。大企業向けの賦課金が減免されているが、欧州委員会が「(欧州連合が禁止する)補助金にあたる」と指摘したことで撤廃も検討されている。経済界には「生産を別の場所に移さざるを得ない」(独化学最大手BASFのボック最高経営責任者)との懸念も広がる。
一方、20年までに温室効果ガスを1990年比で34%削減する目標を掲げる英国は、原発を6カ所新設するほか、発電に占める再生エネ比率を30%まで高める計画。これらの発電所への投資を促すため、2014年から原発と再生エネ電力の買い取り価格を引き上げる予定で、エネルギー・気候変動省は「電力価格は20年までに33%増加する」との見通しを示す。
英国では天然ガスの輸入価格上昇などで、07〜12年に電力料金が31%も上昇。更なる値上げへの国民の反発は強い。野党・労働党のミリバンド党首が「15年の次期総選挙で勝利すればエネルギー価格を凍結する」と公約するなど選挙の争点にも浮上している。