社説

臨時国会閉会/1強体制の危うさ見えた

 「1強国会」の現実を見せつけて、会期を2日延長した臨時国会が、きょう閉会する。
 自民党が政権を奪還し、衆参の多数が異なる「ねじれ国会」が解消してから初めての与野党による本格論戦。「決める政治」への期待に影が差し、巨大与党による「独断政治」への不安が高まった印象が否めない。
 その象徴を、6日成立した「特定秘密保護法」をめぐる攻防に見ることができる。
 保護法は秘密の範囲が曖昧で、チェックする第三者機関の内容や情報公開のルールも明確ではなく、国民の「知る権利」侵害など多くの疑念が最後まで消えることはなかった。
 日本維新の会、みんなの党を誘い込み、独断批判の回避を狙ったが、付け焼き刃的な修正のあらが露呈。強引な運営に両党も離反し結局、自民、公明両党が強行採決を連発、数の力で押し切り、憲政に禍根を残した。
 衆院国家安全保障特別委員会では安倍晋三首相が退席した直後に採決を強行した。イメージの悪化を避けるためだという。姑息(こそく)のそしりを免れまい。
 衆院で修正案の質疑は2時間。世論に耳を傾けつつ審議を尽くすのが「決める政治」の前提のはずで、疑問点の多い重要法を成立ありきで通すのは乱暴に過ぎたと言わざるを得ない。
 「再考の府」を期待された参院でも議論はかみ合わず、理解が深まることはなかった。
 1強の自民党を軸とする巨大与党が政策を決めてしまえば、あらゆる議案が難なく通ってしまう。だからこそ、民意のありかを慎重に探り、独断に陥らない自制が求められるのだ。
 長く与党の座にあった自民党にはかつて、「党内野党」的な派閥が存在し、政府のブレーキ役を担った。その機能は衰えて、自民1強はいま「安倍官邸1強」の状況にある。
 その分「与党内野党」を自認する公明党の役割は重い。ただ、圧倒的な議席差を前に影響力を行使する機会は限られ、自民党に追随する局面が目立った。
 「多弱」の野党の存在感も薄い。民主党はいまだ党内統治に苦慮するありさまで、野党を束ねる指導力に乏しい。
 日本維新、みんなの両党は、政権の「補完勢力」の性格を濃くする。党内に自民党出身者を抱え、保守にくくられる勢力とはいえ、有権者が託した1票に応えていると言えるだろうか。
 野党再編、新党結成を否定する、みんなの党の渡辺喜美代表にとって、古巣との連携が有力な選択肢なのかもしれない。ただ、世論と敵対しかねない今国会における与党の対応に、軸足に迷いをのぞかせる。
 安倍首相は「成長戦略実行国会」を強調したが、その論戦はすっかりかすんだ。責任の多くは政権が負わねばならない。
 内政、外交とも課題が山積している。共産党、生活の党、社民党などを含め、与野党が丁寧に吸い上げた民意を踏まえて、真っ向議論を展開する。通常国会では議会制民主主義が根本から問われることを心すべきだ。

2013年12月08日日曜日

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