がん:病院に患者情報提供義務化 超党派の法案
毎日新聞 2013年10月16日 02時34分
自民、公明、民主3党は15日、国内にある全ての病院にがん患者に関する情報提供を義務づける「がん登録推進法案」を今国会に提出することで大筋合意した。治療成績や経過などを蓄積した「全国がん登録データベース」を作り、国内のがん対策を充実させる目的がある。超党派議員連盟「国会がん患者と家族の会」(代表世話人・尾辻秀久自民党参院議員)の実務者は17日に法案を了承し、今国会での成立を目指す。【横田愛】
法案は、がんと診断された患者について診断した病院に▽氏名▽性別▽生年月日▽住所▽がんの種類や進行度、発見の経緯▽治療内容−−を届け出るよう義務づける。情報は国立がん研究センターに設けるデータベースに蓄積する。データベースは市町村からの死亡届とも照合して更新する。
がん登録はこれまで地方自治体が任意で行っており、政府や関係機関はがんの発症率・生存率などを推計したデータを用いている。しかし、自治体ごとに内容や精度にばらつきがあり、患者団体は有効ながん対策を講じるために法制化が必要だと訴えてきた。
法制化で全患者の情報収集を義務づければ、がんの発症率や生存率、地域性などに関する調査研究・統計の精度は飛躍的に向上する。これをもとに、がん医療や予防のほか、国や地方自治体によるがん対策の企画立案、国民への情報提供などに生かす狙いがある。
がん患者の中には病名を告知されない人もいるが、今回の法案では全数調査を目的にしているため、がん情報の提供を個人情報保護法の例外と位置づけ、患者本人の同意は不要にする。がん情報は追跡調査できるよう実名で登録するが、政令で定める一定の期間を経過した後は匿名化する。
さらに情報が悪用されないよう、個人情報の目的外利用を禁止し、情報開示請求も認めない。情報を漏えいした場合は最高で2年以下の懲役、または100万円以下の罰金を科す。
3党は他の野党にも賛同を働きかけ、全会一致での成立を目指す。データベースの準備作業などを考慮し成立後の施行時期については2016年度とする方向で調整する。