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“水道水”っておいしいよ!

12月5日 18時15分

松田透記者

「水道水はおいしくない」と、ペットボトルのミネラルウォーターばかりを飲んでいる人もいるかと思います。
東京都は、水処理施設を改良するなど25年かけて、この秋、ミネラルウォーターにも負けない、おいしい水道水を都内のほぼ全域に供給できるようにしました。
しかし、これまでの「おいしくない」という先入観を払拭(ふっしょく)するのは簡単ではないようで、今月中旬からは、全国でも珍しい取り組みを始めることになりました。
“水道水離れ”は全国の自治体共通の悩みで、都の取り組みに注目しています。
ネット報道部の松田透記者がお伝えします。

おいしい水道水に変身!

東京都の水道水は、利根川水系などから引いた水を浄水処理して供給されています。

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都によりますと、昭和40年代以降、江戸川などの水質悪化に伴って“かび臭さ”を訴える苦情が多く寄せられたということです。
このため、都は、川の水がきれいな多摩地区の一部を除く5か所の浄水場に、順次、「高度浄水処理施設」を導入していき、25年かかって、ことし10月からは23区全域に供給できるようになりました。
「高度浄水処理」は、それまでの▽薬品を入れて濁りを沈殿させたり、▽砂でろ過したりしていた処理に、新たにオゾンに接触させる工程などを加えたものです。

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殺菌効果のあるオゾンによって臭いの元となる藻などの有機物が分解されていくのです。
さらに、そのあとの工程で微生物を繁殖させた活性炭を置くようにしました。
これは、自然の川の浄化作用を応用した方法で、小さな有機物は微生物に食べられたり、活性炭に吸着されたりして、臭いをほとんど取り除くことができるとしています。
さらに、雑菌の繁殖を抑えるものの、臭いの元にもなっていた、塩素の濃度も減らすように工夫しました。
都によりますと、おいしさにこだわって、ここまで処理をした水道水は、大阪市や千葉県など、全国でもまだ一部の自治体にとどまるということです。

払拭できない先入観

水道水のおいしさに自信を持った東京都は、家庭や事業所などおよそ3600か所を対象に水道水の満足度についてアンケート調査を行いました。
結果から分かったことは都民の感じ方との間に大きなずれがあることでした。
回答者のうち、飲み水として「満足」と答えた人は52%にとどまり、「どちらともいえない」は31%、さらに「不満」も16%いました。
「不満」と答えた人の多くは、理由について「味が悪く、おいしくないから」と答えていました。
なぜ、おいしくないと感じる人が依然としているのか。
都は、昭和40から50年代にかけての「水道水はおいしくない」という先入観が払拭できていないのがいちばんの理由だとみています。
また、飲む温度も関係していると言います。
人が飲み物を生理的においしいと感じる温度は10度から15度の間と言われています。
例えば、ミネラルウォーターは冷蔵庫で冷やして飲むのに対し、水道水は常温で飲む人が多いので“ミネラルウォーターのほうがおいしいと感じてしまう”と分析しています。
このほか、▽集合住宅などで水道水の貯水槽の管理が悪くて中が汚れていたり、▽浄水器の交換時期がすぎて雑菌が繁殖したりするなど、水道水自体は問題なくても、飲む段階で味が悪くなっているケースもあったということです。

おいしさを知ってもらうために

都は、水道水のおいしさを知ってもらおうと、さまざまな取り組みを始めています。

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今月5日には東京・江戸川区で水の飲み比べイベントを行いました。
公園の蛇口から取った水道水と市販のミネラルウォーターを用意し、同じコップに分からないようにして注いで、通りがかった人に飲んでもらいました。
この日、参加した190人余りのうち、水道水のほうがおいしいと答えた人は102人。
ミネラルウオーターを8%ほど上回りました。
参加者の1人は「水はいつもミネラルウオーターしか飲みませんが、水道の水がこんなにおいしくなっているとは知りませんでした」と話していました。

全国でも珍しい“水道水の見える化”

さらに、今月中旬からは全国でも珍しい取り組みを行うことになりました。
都民に自宅の水道水のモニターになってもらう試みです。
自宅の蛇口から出る水のおいしさを、▽科学的な数値と▽実際の味覚で理解してもらい、水道水の応援団になってもらおうというのです。
モニターになった人は、簡単な検査器具を使って▽味に影響を及ぼす塩素や鉄分、それに▽まろやかさの目安になる硬度などを6段階で測定します。
さらに、飲んだときの味や臭いについても感想を書いてもらい、調査地点の地図とともに、都水道局のホームページで公表することにしています。

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モニターの数はおよそ700人で、都内の61の区市町村にいます。
都は、都民がホームページを見れば、自分が住む地域の水道のおいしさが分かり、応援団のネットワークがさらに広がっていくと期待しています。
こうした取り組みは、同じように水道水のイメージアップ戦略に悩まされている全国の自治体からも注目を集めています。
都は、「水道水はペットボトルの水に比べて排出される二酸化炭素も少ないうえ値段も安い。本当のよさを客観的なデータや多くの人のことばで知ってもらい、水道水を見直してもらうきっかけになれば」と話しています。