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社説

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秘密保護法成立 憲法を踏みにじる暴挙だ(12月7日)

 日本の戦後の歩みに逆行する転換点になってしまうのではないか。

 政府が指定した機密の漏えいや取得に厳罰を科す特定秘密保護法が参院本会議で成立した。政府・与党が強引な国会運営で押し切った。

 この法律は国民主権、基本的人権尊重、平和主義という憲法の三大原則をことごとく踏みにじる。憲法に基づき、平和で民主的な社会をつくろうと丹念に積み上げてきた国民の努力を台無しにする。

 そんな悪法を、数に任せて力ずくで成立させた政府・与党の暴挙に、強い憤りを覚える。

 だが、「戦後レジームからの脱却」を主張する安倍晋三首相にとって、これは最初の一歩にすぎない。

 国民が黙っていれば、首相は今後も巨大与党を背景に、最終目標である改憲と国防軍創設に向け突き進むだろう。

 秘密保護法廃止の声を上げ続けなければならない。同時に、同法の乱用を防ぐできるだけの手だてを講じ、厳しく監視することが必要だ。

 新法の欠陥は枚挙にいとまがないが、最大の問題は国民よりも国家を上位に置く点である。

 国民主権は国民に情報が開かれていることが前提だ。だからこそ憲法は表現の自由を基本的人権の一つとし、それによって国民の「知る権利」を保障する。

 ところが新法は官僚が事実上、好きなように情報を特定秘密に指定し、永久に非公開にできる。国民の代表である国会議員にさえ情報を隠せる。

 国の安全保障のためには、国民の知る権利はいくら制限しても構わないという発想だ。中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイル開発を持ち出せば、国民の理解を得られると踏んだのだろう。

 首相は今後、集団的自衛権の行使を認める国家安全保障基本法を制定し、自衛隊の海外での武力行使を前提に日米防衛協力のための指針を見直す道筋を描く。その先に見据えるのは国防軍の創設だ。

 戦前の政府は、軍機保護法などによって国民の目と耳と口をふさぎ、悲惨な戦争に突入していった。安倍政権は、その反省に基づく日本の戦後の歩みをここで折り返し、再び戦争を可能にする道を進もうとしているのではないか。

 首相に待ったを掛けるには、秘密保護法廃止に向けた粘り強い取り組みが不可欠だ。ただ、廃止は容易でなく時間もかかる。その間に官僚がやりたい放題をやるのを少しでも抑えなければならない。

 まず必要なのは情報公開法の改正だ。政府による秘密指定の妥当性を裁判所がチェックする「インカメラ審理」を導入することなどが柱になる。

 公文書管理法を改正し、秘密指定が解除された文書については廃棄を許さず、一定の保存期間経過後には必ず国立公文書館に移管、公開するようにすべきだ。

 これらにも増して重要なのは、国会が政府を厳しく監視することだ。今国会では国権の最高機関である国会の地位が脅かされているのに、首相に唯々諾々と従う与党議員の情けない姿ばかりが目立った。議会人の見識はどこに行ったのか。

 新法は一般市民の日常も脅かす。国民は自分たちの暮らしを守るためにも反対の意思を示し続けなければならない。

 首相にはここで立ち止まり、自らの安保政策を根本から考え直してほしい。

 元毎日新聞記者の西山太吉氏は「情報が国民から遮断され、日本の民主主義が空洞化する恐れがある」と語る。沖縄密約を暴いて有罪判決を受けたジャーナリストの警告を重く受け止めたい。

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