2013年12月7日10時40分
●大熊・双葉「戻らない」6割超す
【岡本進、根岸拓朗】町に戻らないと決めている住民が6割を超え、約10カ月間で大幅に増えていた――。原発事故で全住民が避難している大熊、双葉両町の住民意向調査から、帰還がますます難しくなっている実態が明らかになった。
調査結果は復興庁が6日、公表した。大熊町5043世帯、双葉町3394世帯の世帯主を対象に10月に郵送配布で実施し、大熊町は54.8%、双葉町は51.0%から回収した。
現時点での帰還の意向を尋ねると、大熊町では「戻らないと決めている」が67.1%、「戻りたい」が8.6%、「まだ判断がつかない」が19.8%だった。
双葉町では「戻らない」が64.7%、「戻りたい」が10.3%、「判断がつかない」が17.4%だった。
前回の意向調査では、「戻らない」が大熊町(調査時1月、回収率65.0%)で42.3%、双葉町(調査時昨年12月~今年1月、回収率59.7%)では30.4%だった。両町とも「判断がつかない」という層が大きく減っているため、長引く避難生活などにより帰還の断念を判断した人が増えた可能性がある。
今回の結果を年代別にみると、「戻りたい」と考える人は両町とも20~60代でいずれも1割に達していない。「戻らない」理由としては「放射線量が低下せずに不安」「原発の安全性に不安」「帰還までに時間がかかる」「生活に必要な商業施設などが元に戻りそうにない」などが目立った。
「町に戻らない場合に今後居住を希望する自治体」を尋ねると、大熊町では「現在住んでいる自治体」が40.4%、「別の自治体に転居」が18.2%、「決まっていない」が34.9%だった。具体的な居住地の希望はいわき市が49.2%と半数に近く、郡山市が9.0%、会津若松市が5.6%と続く。県外も21.4%いた。
双葉町の場合、「避難先にそのまま住む」が49.0%、「別の自治体に転居」が14.4%、「決まっていない」が25.6%だった。居住地の希望はいわき市33.2%、郡山市8.3%、南相馬市4.5%の順だった。県外は31.8%いた。
復興公営住宅の入居については、「希望する」が大熊町で17.5%、双葉町で17.3%にとどまった。「希望しない」は大熊町で48.0%、双葉町は53.8%。希望しない人に今後の居住地希望を聞くと、「今の居住で当面、継続して暮らしたい」がいずれも4割超と最も多かった。
この結果に、双葉町の伊沢史朗町長は取材に「非常に厳しい数字だが、これが現実だと受け止めるしかない。町民たちが待ちきれなくなったのだろう。方向性を示せず、反省しかない。町外コミュニティーの整備など、町に残りたい人のために出来る限りの対応をしたい」と話した。
一方、大熊町の鈴木茂副町長は「前回の調査時と比べて回答者が大幅に減ったので、町への帰還を諦めた人が増えたかどうか、単純に比較はできない。ただ厳しい状況は変わらないので、住民が町に戻りたいと希望を持てるような復興ビジョンをまとめたい」と話した。