特定秘密 最終盤の攻防続く12月6日 19時51分
国会は、与党側が6日中に参議院本会議で特定秘密保護法案を可決・成立させる方針なのに対し、野党側は、民主党が法案の成立を阻止したいとして、安倍内閣に対する不信任決議案を衆議院に提出し、与野党の最終盤の攻防が続いています。
国会は、焦点の特定秘密保護法案を巡って、与野党の対立が深まっており、与党側は、野党側の抵抗があっても、法案を確実に成立させるため、会期を2日間延長することを提案し、午後6時すぎから開かれた衆議院本会議で、会期の延長が決まりました。
そのうえで、与党側は、6日中に参議院本会議で特定秘密保護法案の採決を行い、可決・成立させる方針です。
これに対し、野党側は、6日の採決に反発していて、民主党は「法案は国民の知る権利を侵害するおそれがあり、成立を阻止したい」として、夕方、安倍内閣に対する不信任決議案を衆議院に提出しました。
安倍内閣に対する不信任決議案は、このあと再開される衆議院本会議で、採決が行われ、与党側の反対多数で否決される見通しです。
一方、参議院では、午後3時すぎから、本会議が開かれ、民主党が提出した特定秘密保護法案を担当する森・少子化担当大臣に対する問責決議案が、自民・公明両党の反対多数で否決されました。
与党側は、6日夜、参議院本会議を再開し、民主党が提出した特別委員会の中川委員長に対する問責決議案を否決したうえで、特定秘密保護法案の採決を行う方針で、与野党の最終盤の攻防が続いています。
特定秘密の課題1「チェック機関」
特定秘密保護法案を巡っては、政府が示したチェック機関が、どれだけ役割を果たせるのかが問われることになります。
政府が示したチェック機関の1つが「保全監視委員会」です。
内閣官房に設置され、外務省や防衛省、警察庁などの事務次官級の官僚をメンバーに、特定秘密の指定や解除の状況などをチェックし、総理大臣が、国会などに毎年提出する報告書を作成するとされています。
秘密の指定などを1つの省庁の独断で行わないようにするのが目的で、アメリカの「省庁間上訴委員会」を参考にしているということです。
これについて、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「秘密を指定する省庁の官僚が集まるため、客観的な判断ができるとは思えず、独立性を持ったチェック機関とは言えない」と指摘しています。
一方、これとは別に、5日、新たに示されたもう1つのチェック機関が、「情報保全監察室」です。
「情報保全監察室」は、内閣府に20人規模で設置され、個別の特定秘密の指定や解除、有効期間の設定や延長について検証し、不適切なものについては、是正を求める独立性の高い第三者機関とされています。
政府は、「情報保全監察室」を、法的にも高度な独立性を備えた機関とするため、今後、出来るかぎり法改正を行って、「局」に格上げするとしています。
これについて、三木理事長は、「チェック機関にとって最も重要な独立性を担保するには、法律で職員の身分保障や権限について、しっかりと規定することが不可欠だ。大切な中身が議論されないなか、組織だけができても、秘密の指定や解除を本当にチェックできるのか疑問が残る」と指摘しています。
アメリカの国立公文書館には、同様の名称の「情報保全監察局」という組織があり、大きな権限が与えられています。
政府機関が、隠す必要のない情報を秘密指定したり、秘密指定の期間を理由なく延長したりしていないか、立ち入り検査などをしてチェックできるうえ、秘密指定を解除するよう請求することもできます。
特定機密の課題2「公開時期と方法」
いったん特定秘密とされた情報を後世の人たちが検証できるよう、適切な時期に公開することも求められています。
特定秘密がこうした「歴史の検証」を受けることは、外交や安全保障に携わる政府の担当者が、責任感と緊張感を持って仕事にあたるうえでも重要です。
法案では、特定秘密の指定期間は最長5年で何度でも更新でき、30年を超える場合は内閣の承認を得なければならないとし、60年後までには暗号など一部の例外を除いてすべてを公開するとしています。
この期間について、各国の秘密保護法制に詳しい早稲田大学大学院客員教授の春名幹男さんは「60年はやはり長すぎで、担当の官僚に、公開を前提にした問題のない仕事をさせるには有効ではないと思う。指定期間が30年を超える場合も、内閣だけでなくアメリカのように外部の有識者がチェックする体制にすべきだ」と話しています。
また、秘密指定が解除された公文書をその後、どのように公開につなげていくかも重要なポイントです。
現行の公文書管理法では、公文書の中でも、歴史的に重要なものは国立公文書館などに移しますが、それ以外のものは廃棄してもよいことになっています。
この点について、法案は、秘密指定されてから30年が経過した公文書のうち、延長が認められなかったものは、すべて国立公文書館などに移さなければならないとしているほか、政府は、特定秘密に関する公文書の廃棄の是非を判断する「独立公文書管理監」を内閣府に設けるとしています。
早稲田大学大学院客員教授の春名さんは、「独立公文書管理監は、あくまで政府の内部のポストなので限界がある。秘密指定期間を外れた文書は基本的には廃棄せず、公開を原則とすることが重要で、今後も公文書管理法の改正など必要な法律の整備を進めていくべきだ」と指摘しています。
特定秘密課題3「適性評価」
特定秘密を取り扱うことになる公務員や民間業者が、情報を漏らすおそれがないかチェックする「適性評価」をどの機関が、どのように行うのかという点も大きな課題となっています。
法案によりますと「適性評価」では、テロ活動との関係や犯罪歴、日頃の飲酒の程度や借金などの経済状況など7つの項目を詳しく調査することになっています。
現行法の下で国の「特別管理秘密」を取り扱う公務員の数は、警察庁、外務省、防衛省などで合わせておよそ6万4000人ですが、今後「特定秘密」を取り扱うことになる人の数は、明確ではなく、政府側はこれまでの国会審議で、「相当数になることが見込まれる」などと説明しています。
この相当数の公務員や民間業者を対象に、適性評価は行われ、上司や同僚からの聞き取りだけでなく、行政機関や信用調査機関、医療機関からの情報収集も想定されています。
適性評価を行うのは、特定秘密を扱うそれぞれの行政機関とされていますが、一部の専門家は、これだけ大がかりな調査になると、その多くを警察に依存することになり、警察の権限が際限なく拡大するおそれがあると、指摘しています。
こうした指摘について、法案を担当する内閣情報調査室は「それぞれの行政機関が犯罪歴などについて警察に「照会」することはあるかもしれないが、警察の権限だけが拡大することはない」としています。
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