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【放送芸能】

「安倍色人事」外堀埋める NHK松本会長退任へ

 NHKの松本正之会長が五日の定例会見で、続投の意思がないことを表明した。会長の任免権を持つ経営委員会に、「お友達人事」といわれる新任メンバーを送り込んだ安倍晋三政権。突然の退任表明は、政権に外堀を埋められたからという見方が広がっている。 (前田朋子、藤浪繁雄、中村信也)

 五日は年内で最後の定例会見。松本氏は会長を続投する意思を聞かれ、慎重な言葉遣いながらも退任する意向を明らかにした。

 NHK関係者の一人は「自分の意思で退任を決めたというように繕った」とみる。松本氏が就任したのは民主党政権下の二〇一一年一月。就任を内諾した私立大の前トップが拒否した混乱を受け、JR東海副会長だった松本氏が引き受けた。自民、公明両党が政権を取り戻すと、菅義偉(すがよしひで)官房長官を軸とした官邸主導で、日銀総裁や内閣法制局長官など次々と人事を入れ替えた。

 菅氏は第一次安倍内閣の総務相で、受信料の値下げなどをNHKに求めた。松本氏は満額ではないものの値下げを実現し、国会で高すぎると問題視された職員給与にもメスを入れた。二〇一三年度上期には受信契約総数が三千八百四十九万件と過去最高になるなど、「マイナスが見つからない」(NHK幹部)という業績を挙げた。

 経済ジャーナリストの町田徹さんは「いずれも今までの会長ではできなかったこと。政権の意向をくんだ会長では誰であれ、NHKは一つになれない。予算や人事を国会に握られ、自由じゃないNHKがますます萎縮する」と、国営放送ではない、公共放送としてのNHKを憂える。

 松本氏はなぜ、突然退任を表明したのか。「首相の信任が厚い菅氏に外堀をどんどん埋められ、外から“連れてこられた人”として、ドロをかぶってまで続投する必然性はないと判断したのだろう」とNHK関係者は話す。

 安倍首相の財界ブレーンの一人は「原発とかオスプレイとか、NHKの放送がひどいと聞いている。ほかの国の国営や公共放送で、あんなに政府をたたくことはない」と批判。「NHKの病巣は深いみたいだから、外から会長を持ってくるしかない」と話す。

 先月三十日、奈良市であった「語る会」。視聴者から「報道やドキュメンタリーが左翼的、反日的なプロパガンダの場になっていいのか」との声が出た。NHK関係者は「視聴者側にまで官邸の手が回った、と松本氏が思ったとしてもおかしくない」と話した。

◆経営委「年内に選任を」

 NHKの会長は、経営委員十二人のうち、九人以上の賛成で決まる。松本正之会長は有力な候補者の一人とされていただけに、新会長人事の見通しは不透明だ。

 十一月に国会同意を得た新委員のうち、作家の百田尚樹氏と日本たばこ産業(JT)顧問の本田勝彦氏は欠員補充のために既に委員に就任。今月十一日には、埼玉大名誉教授の長谷川三千子氏と海陽学園海陽中等教育学校長の中島尚正氏が加わる。四人はいずれも安倍晋三首相に近いとされる。

 経営委に設けられている「指名部会」は、「公共放送としての使命を十分に理解している」「政治的に中立である」など、会長の資格要件六項目を決定。浜田健一郎委員長(ANA総合研究所会長)は先月三十日、奈良市で行われた視聴者との会合終了後、「年内に選任を終えたい」と明言。一方で、経営委員一人一人が会長候補者を推薦できるため、「(候補者が)何人になるのか見えない」とも話しており、臨時会合の開催も視野に、選任を急ぐ方針を示している。

◆記者会見での一問一答

 松本会長の記者会見での主なやりとりは次の通り。

 −任期後もNHKを引っ張る気持ちは。

 「任期満了以降は経営委員会でいい方を選んでいただくのがいい。私は入ってないと思っている」

 −経営委員会が続投を要請しても受けないということか。

 「来年一月二十四日までの任期を全うする。それ以降はいい人が候補になると思う。そういう方が公共放送の発展に尽くしていただくということでいいのではと思っている」

 −経営委員会では松本会長の再任もあり得る現状だが、それでも再任(続投)はないのか。

 「経営委から全く聞いていないが、聞かれたら今の私の考え方に基づいて答える」

 −次期は新しい人がいいということか。

 「そういうこと」

 −三カ年経営計画の二年目。達成できる見通しがついたのか。

 「受信料を値下げして収支を黒字安定基調に乗せるかがテーマで、次に進める状況になった。NHKもみんなで成長している。私が責任を持ってやることも一定の役割を果たしたと考える」

 −一期三年での退任は就任当初からの考えか。

 「女房にも相談しないで(就任を)決めたので、そういう事情もある」

 −二期、外部からの会長が続いた。内部から出るべきだとの意見や政治状況も(退任に)加味したのか。

 「いろんなことがニュースで出ているようだが、一切関係ない」

 

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