東京都:ぜんそく認定中止、患者助成も縮小へ 拠出金尽き
毎日新聞 2013年12月05日 19時06分(最終更新 12月06日 00時43分)
東京都は5日、医療費助成制度の対象となるぜんそく患者の新規認定を2014年度末で打ち切る方針を明らかにした。認定患者への助成額も、現行の「自己負担の全額」から、18年度以降は3分の1に縮小する。東京大気汚染訴訟の和解を受けて原資を拠出した国や自動車メーカーが追加負担を拒んだためで、患者側から批判が出ている。
08年8月に都が独自に創設した助成制度は、喫煙していない18歳以上の都内のぜんそく患者が対象。訴訟で被告になった都と国が3分の1、自動車メーカーと首都高速道路が6分の1ずつを負担して、計200億円を拠出した。
しかし和解条項で、制度は5年後に成果を検証した上で見直すとされている。05〜09年度に環境省が首都圏で実施した疫学調査では、成人世代などで自動車排ガスを吸い込んだ量とぜんそく発症率に因果関係は認められなかった。国などはこれを根拠の一つに「助成をこれ以上続ける必要はない」と主張。都が求める追加負担に応じないため、拠出金は14年度末でほぼ尽きる。
中村靖・知事本局長は都議会の答弁で「(国など)関係者に新たに財源の拠出を働き掛けているが、前向きな回答がない」と説明。都だけで制度を続けるのは困難とした上で、14年度までの認定患者には、経過措置として都予算で17年度まで全額、その後は3分の1を助成する方針を示して理解を求めた。
認定患者は現在約7万6000人おり、「東京公害患者と家族の会」副会長の石川牧子さん(57)は「患者の声も聞かずに突然方針が出され、納得できない」と批判。患者側の訴訟代理人を務めた西村隆雄弁護士は「認定患者は増え続けており、制度を縮小する理由はない」と話した。【清水健二】
【ことば】東京大気汚染訴訟
東京都内のぜんそく患者らが自動車排ガスで健康被害を受けたとして損害賠償などを求めた訴訟。公害裁判では初めて自動車メーカーも被告となり、02年10月の1審判決は都と国、首都高の責任を認めた。都は控訴せず、残りの被告も07年8月に2審で原告側と和解した。和解条項に、各被告の負担による医療費助成制度創設が盛り込まれた。