ストーカー総合対策本部発足へ12月6日 18時28分
東京・三鷹市で女子高校生が殺害された事件を受けて、警視庁はストーカーなど加害者が被害者に危害を加えるような事案の切迫性を的確に判断し、加害者の早期の検挙や被害者の保護を積極的に行えるようにするため、これまでのストーカー対策室に、刑事部の捜査員などを加えた総合対策本部を新たに発足させるなどとした対策をまとめました。
ことし10月に、東京・三鷹市で女子高校生がストーカーの男に殺害された事件では、被害者が地元の三鷹警察署に初めて相談した日に殺害されるという事態になり、警視庁は当時の対応を検証した結果と対策を公表しました。
この中では、警察署に相談があった時点で、被害者に危険が差し迫っている場合があることを念頭において、事態の危険性や切迫性を的確に判断して警察署内で情報を共有したうえで、被害者の保護対策などを迅速に進める必要があるとしています。
そのうえで、ストーカー被害などに組織を挙げて対応するため、副総監をトップとしたストーカー・DV総合対策本部を新たに発足させることを決めました。
対策本部は生活安全部に設けられているストーカー対策室に、刑事部の捜査員や被害者対策を担当する警察官を加えて、人員をおよそ80人に倍増させ、警察署が相談を受けた場合は、24時間体制で必ず報告を受けて事態が切迫しているかを判断し、警察署と連携して加害者の早期の検挙や被害者の保護を積極的に行うとしています。
一方、警察署でも切迫性を判断するために相談を受ける場合は、刑事課の捜査員が同席し、相談に当たる体制を女性警察官を中心に充実させ、担当者の技能を高めるための訓練などを行うとしています。
さらにストーカー被害が早い段階で警察に通報され、被害者の保護にも積極的に取り組むため、自治体やNPO団体などとの連携を強化するとしています。
対策本部のトップを務める、警視庁の小谷渉副総監は「この種の事案が急展開して重大事件に発展するおそれが大きいことを鑑みて、相談者の安全確保が図られるよう、迅速で的確な対応を徹底するとともに、関係機関、団体とも連携し、社会全体でストーカー被害を防ぐ取り組みを進めてまいります」と話しています。
ストーカー新対策を全国の警察に指示
ストーカーによる凶悪な事件が相次いでいることを受けて、警察庁は、ストーカーの危険度を客観的に判定するチェックシートなどを使って、危険性をより正確に見極める態勢を整備することなど、新たな対応策を決め、全国の警察本部に指示しました。
おととし12月に、長崎県西海市で起きたストーカー殺人事件や、ことし10月、東京・三鷹市で起きた事件では、被害者や家族が事前に警察に相談していましたが、警察は、差し迫った危険性はないと判断し、十分な対応を取っていませんでした。
このため警察庁は、精神科医などの協力を得て、ストーカーの危険度を客観的に判定するチェックシートを作成し、危険性をより正確に見極める態勢を、整備することを決めました。
その結果は、警察署の署長だけでなく警察本部の専門部署にも直接報告し、即座に対応できるようにしたいとしています。
また、警察本部には、ストーカー事件を担当する生活安全部門と、殺人事件などを扱う刑事部門による合同のチームなどを作ることも決めました。
緊急性が極めて高いと判断した場合は、誘拐事件などを担当する専門性の高い捜査員を投入するなどして、被害を未然に防ぐ対策を徹底したいとしています。
警察庁は、被害者が被害届を出すことをためらっている場合でも、危険性が高いと判断した場合は説得に努め、ただちに民間や警察の施設などに避難させたり、加害者を検挙したりすることで、被害者の安全の確保を最優先することも決め、これらの対策を、6日、全国の警察に指示しました。
神奈川県警はすでに一部導入
今回、警察庁が公表した新たなストーカー対策の一部は、神奈川県警察本部で、すでに導入されています。
神奈川県警は、ことし7月、生活安全部に「人身安全事態対処プロジェクト」という新たな専門部署を設けました。
これまで主にストーカー対策を担ってきた生活安全部だけでなく、刑事部からもメンバーが加わり、合わせて65人で構成されています。
プロジェクトの責任者、山下繁夫警視は、「相談の段階から刑事部門が介入し、場合によっては、即、事件として扱い、被害者の保護が必要であれば、すぐに保護対策に入ります。段階を踏まずに初期の段階から、生活安全部と刑事部が一緒になって、対処することが一番の特徴です」と話しています。
プロジェクトが設けられたきっかけは、神奈川県内で発生した2つの事件でした。
去年11月、逗子市で、女性がストーカー行為を受けた末に元交際相手に殺害されたほか、ことし5月には、伊勢原市で、夫婦間の暴力が原因で、離婚した女性が元夫に包丁で首を刺されて大けがをしました。
いずれの事件も、警察が、被害者から事前に相談を受けながら防げなかったことから、各警察署と県警本部、それに生活安全部と刑事部の連携が課題となりました。
このため、プロジェクトでは、ストーカーや夫婦間の暴力、それに児童虐待などについて、警察官が相談を受けた内容や相談者の希望などを記録し、警察署の中で情報共有することを徹底しました。
そのうえで、県警本部のプロジェクトとも情報を共有し、各警察署と本部、それに生活安全部と刑事部が一体となって、どのぐらい切迫した相談なのか迅速かつ的確に判断し、対応できるようにしたとしています。
発足以来、この4か月余りで、プロジェクトに寄せられた相談はおよそ2700件に上り、このうち69件は実際にメンバーが出動して事件として扱ったことで被害を未然に防ぐことができたということです。
このうち、ことし8月、小田原市の女性から、元交際相手のストーカー行為について相談を受けたケースでは、プロジェクトのメンバーが出動して元交際相手と面会し、これ以上、ストーカー行為をしないよう警告しました。
しかし、元交際相手の態度から、女性の身に危険が及ぶ恐れがあると判断し、女性の自宅や勤め先の周辺で警戒に当たっていたところ、元交際相手が現れ、ナイフを隠し持っていたため銃刀法違反の疑いでその場で逮捕しました。
山下警視は、「現場の警察署と本部が情報をいち早く共有し、本部の方で警察署を支援したり、対応を指示することが重要です。今後も、本部と警察署が連携を深めることで、被害を未然に防ぐ対策を徹底したい」と話しています。
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