秘密保護法案:「不適格」評価で解雇も 公務員や契約業者

毎日新聞 2013年12月06日 12時27分(最終更新 12月06日 12時37分)

 参院で審議中の特定秘密保護法案には、秘密を扱う公務員や民間の契約業者がその資格があるかどうかを調べる「適性評価」がある。適性が認められなかった場合に、解雇など不利益な扱いを禁止する規定が、民主党政権時代の法案では検討されていたが、今回の法案からは削除されていたことが分かった。防衛省を中心に公務員は今でも事実上の適性評価が実施されているが、民間業者は今回初めて対象になる。秘密を扱う適性を巡って「身分が守られるのかどうか」が議論されないまま、法案が6日にも成立する恐れがある。【青島顕、臺宏士】

 毎日新聞は、民主党の野田佳彦政権時代の2011年11月、内閣官房で検討されていた法案の「素案」や条文の解説を入手した。素案の12条には、公務員や契約業者を対象に「適性評価の実施に同意しなかったり、適性を有しないと認められたことを理由に、免職・解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない」と定められていた。

 解説には「理不尽な事態への不信感・不安感を払拭(ふっしょく)できなければ、対象者は調査事項に個人情報をもれなく正確に提供することをためらい、制度の実効性を損なうことになりかねない」と書かれている。

 ところが、今国会に提出された法案には、この条文がない。内閣官房職員の一人は条文が以前にあったことを認めたうえで「公務員法なども、不利益な扱いを受けないよう担保している。だが、明文規定はあった方が公務員には安心なのは確かだ」と話す。

 公務員の場合は、09年から法に基づかない「適格性確認制度」が実施されている。防衛省を中心に6万4000人以上に適格性が認められており、今回の法案では、この制度をモデルに適性評価を導入する予定だ。

 一方、民間業者は法案が成立すれば初めて評価の対象になる。民主党時代の条文解説は「労働契約法や判例が、適性評価に同意しなかったことや適性を有しないと認められたことを理由として行われた解雇や不利益な取り扱いに効力を有するかは必ずしも明確でない」と懸念を示し、条文に入れた理由を説明している。

 民主党で法案を検討していた国会議員の一人も「秘密を扱うには適切でない人でも、人事上ペナルティーを受けて『一生ヒラ』などにならないような配慮が必要だと議論していた。(規定がない)今回の法案は乱暴だ」と批判している。

 【ことば】適性評価

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