福島原発事故:双葉の5高校休止へ 広野町に統一校
毎日新聞 2013年12月03日 21時40分(最終更新 12月04日 02時37分)
東京電力福島第1原発事故で福島県の避難区域にあった県立高5校の存続問題を巡り、県教委は3日、5校の生徒募集を今年度で停止し、2016年度末で休校とする方針を示した。5校を事実上統廃合する形で同県広野町に15年度、「中高一貫校」を設置し、全国各地に避難している子どもたちを中心に生徒を募集する。しかし、住民帰還は進んでおらず、一貫校が順調に機能するか見通せないのが現状だ。
県教委によると、5校はいずれも双葉郡から避難し、サテライト校で授業を実施している▽浪江▽浪江津島▽双葉▽双葉翔陽▽富岡の各校。広野町への一貫校設置は、放射線量が比較的低く、電車が再開しているなどの利便性を考慮した。
高校を先行してオープンさせ、高度なスポーツ技術や農業などの専門教養を学べる「総合学科」を設ける。ただ、開校時には新校舎が間に合わないため、町内の中学校や小学校など既存の施設を利用する。
一貫校の設置を目指す背景には、双葉郡内の子どもが区域外就学や住民票を移すなどして児童・生徒数が減少し続けるという危機感がある。郡内の教育長らは今年7月、郡南部に中学と高校が近接して6年間のカリキュラムを行う一貫校の設置を求める「教育復興ビジョン」を文部科学相に提出。候補地には楢葉、広野、川内の3町村が手を挙げ、選定は県に一任していた。
広野町への設置が決まったことについて、双葉地区教育長会の武内敏英会長(大熊町教育長)は「地に足を着けた準備ができる」と評価。一方、来春の帰町(避難指示解除)時期判断に向け、原発廃炉や再生可能エネルギーなどを専門的に学ぶ中高一貫の工業系学校の誘致を行ってきた楢葉町の松本幸英町長は「15年春の開校というスケジュール優先で議論が進んだ」と批判的な見解を示した。
県立高5校のPTA会長と同窓会長は先月末、文科省などに、5校休校ではなく存続校を置くことなどを求めて要望書を提出したばかり。今年創立90年の双葉高PTA会長の水野谷知恵(みずのやともえ)さんは「双葉郡の5校は子どもたちや保護者、卒業生にとって古里や復興の象徴。それぞれの特長を生かした一貫校をつくるためにも、今後の議論に参加させてほしい」と要望した。【蓬田正志、中尾卓英】