秘密保護法案:ドタバタぶり露呈…参院委審議
毎日新聞 2013年12月04日 23時33分(最終更新 12月05日 00時39分)
参院審議入りから1週間あまり。与党は5日、特定秘密保護法案を参院の特別委員会で採決する構えだが、4日の委員会では安倍晋三首相が「保全監視委員会」という機関の新設を突然言いだして、野党側を当惑させた。審議不足で法案の不完全な姿やほころびが露呈する中、法案に反対する市民が国会議事堂を取り巻いた。【青島顕】
◇新機関名に「何?」
「いま何て言った」−−。4日午前10時過ぎの参院特別委員会。やじが飛び交う中、自民党議員の質問に答えた安倍首相は秘密をチェックする「第三者的機関」として「保全監視委員会」、有識者会議として「情報保全諮問会議」の新設を突然言い出した。衆参の審議で初めて登場する機関名で、議場は騒然。福山哲郎氏(民主)は「初めて聞くぞ」と、周囲の議員と顔を見合わせてメモを取った。
法律運用に密接に絡む機関だが、政府・与党は法案修正をしない方針だ。どう位置づけるのか。与党の責任者の一人、公明党の大口善徳衆院議員は「(法律の下で行政機関の裁量で決める)政令で定めればよい」と説明。山田健太・専修大教授(言論法)は「場合によっては政令で定めてもよい会議体もあるが、法律の基本構造に関わる会議体はきちんと法律に定めるべきだ」と批判する。
◇自治体へ有事伝達は?
武力攻撃や大規模テロに見舞われた際、住民を守る仕組みとして国民保護法(2004年成立)がある。知事が国、警察、自衛隊などと情報共有して避難指示を出したり警戒区域を設定したりする。09年まで秋田県知事を務めた寺田典城(すけしろ)・みんなの党参院議員は「法案が成立したら、県警本部長で特定秘密の情報が止まり、知事に提供されなくなる。知事が緊急事態対応をするのは困難だ」と話し、法案に反対する意向だ。
内閣官房内閣参事官時代に国民保護法を担当した礒崎陽輔首相補佐官は「特定秘密を具体的に決めるのはこれからだが、知事に提供しなければならないものはあるかな」と首をかしげた。
秘密保護法案の「原形」とされる09年の内閣官房の資料では、特定秘密は有事を想定して地方自治体を含めて共有されることになっていた。しかし、審議中の法案では秘密を扱うのは、国と都道府県警らに限定された。
◇国会への秘密提供は?
国会が国政調査権を発揮して、特定秘密の妥当性をチェックする仕組みの実現を危ぶむ声もある。