1票の格差:広島高裁判決「違憲状態、無効は棄却」参院選
毎日新聞 2013年12月05日 11時44分(最終更新 12月05日 18時31分)
「1票の格差」が最大で4.77倍だった今年7月の参院選は、法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、弁護士グループが広島、山口両選挙区の選挙の無効を求めた訴訟の判決が5日、広島高裁であった。宇田川基裁判長は「投票価値の著しい不平等状態が生じていた」として違憲状態だったと判断する一方、「国会の裁量権の限界を超えるものとは言えない」として無効請求は棄却した。14高裁・高裁支部で起こされた同種訴訟の判決は、「違憲で無効」とした広島高裁岡山支部に続いて2件目。一部の原告は即日上告した。
参院選の1票の格差を巡っては、2009年と昨年の最高裁大法廷で、選挙制度の見直しを求める判決が相次いだ。しかし、国会は7月の選挙前に定数を「4増4減」したが、小幅な格差縮小にとどまった上、都道府県単位の定数配分の仕組みは維持した。9月になり、参院各派代表による検討会は、選挙制度の改革案を14年中に作り、16年の参院選で導入する方針を示した。
判決は、参院選での投票価値の不平等状態について「もはや到底看過することができない」として違憲状態だったと判断。一方で、選挙制度の見直しは「参議院の在り方も踏まえた高度に政治的な判断が求められ、相応の時間を要する」とも指摘した。参院選を違憲状態と判断した昨年の最高裁判決から、選挙時は約9カ月しか経過していないことや、参院で制度改革を検討していることを踏まえ、「国会が是正しなかったことが、立法裁量権の限界を超えるものと断定することは困難」として、違憲の一歩手前でとどめるべきだと結論付けた。ただ、16年選挙までに格差が改善されなければ「違憲と判断されることになる」と国会にクギを刺した。
7月の参院選では、広島選挙区で溝手顕正(自民)、森本真治(民主)の両氏、山口選挙区で林芳正氏(自民)が当選。議員1人当たりの有権者数が最少の鳥取選挙区との格差は、広島2.41倍、山口2.48倍だった。【服部陽、黄在龍】