プレート境界は「滑る粘土」=震災大津波の要因―「ちきゅう」で解明・海洋機構など
時事通信 12月6日(金)4時5分配信
東日本大震災の巨大地震が日本海溝近くのプレート境界で発生した際、陸側プレートの先端が大きく滑って海底を持ち上げ大津波を起こしたのは、この境界断層の先端が滑りやすい粘土層だったことが大きな要因と分かった。粘土層の厚さは最大5メートルで、南海トラフの境界断層の約40メートルに比べ非常に薄いという。
海洋研究開発機構や東北大などの国際研究チームが昨年、探査船「ちきゅう」で陸側プレート先端下にある境界断層の粘土質岩を採取し、断層の残留熱を測定して結論付けた。論文は6日付の米科学誌サイエンスに発表された。
この粘土層は大昔の日本列島の火山噴火で海底に積もった火山灰が変わった岩石を多く含み、水を通しにくい。地震で粘土層内部が急にずれ、摩擦熱で水分が膨張したが、層の外には出にくいため圧力が高まり、非常に滑りやすくなったと考えられる。
このことは筑波大の氏家恒太郎准教授らが、採取した粘土質岩に圧力をかけ高速回転させて行った実験で裏付けられた。
実際に滑った部分の厚さは数ミリから1センチ程度とみられる。京都大の加納靖之助教らが断層の残留熱から推定すると、地震発生時の摩擦熱は厚さ1ミリの場合1250度、同1センチでは790度だった。
ちきゅうの掘削地点は牡鹿半島の東約220キロの日本海溝付近。水深約6900メートルの海底から地下約820メートルまで掘り、粘土質岩を採取した。
東海、東南海、南海地震を起こす恐れがある南海トラフの場合、境界断層に含まれる滑りやすい粘土質岩の割合は日本海溝の半分以下だが、過去に大津波が起きている。海洋機構などは9月から紀伊半島沖の南海トラフで掘削を再開し、メカニズムの解明を目指している。
最終更新:12月6日(金)10時25分
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