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政治の暴走は許さない

2013年12月06日(最終更新 2013年12月06日 10時33分)

 憲政史上まれに見る暴挙である。民主主義の危機と言っても過言ではあるまい。

 特定秘密保護法案が5日、参院の特別委員会で強行採決され、自民、公明両党の賛成多数で可決された。臨時国会会期末の6日までに与党は参院本会議で採決に持ち込み、成立を図る構えだ。

 秘密の定義も範囲も曖昧で「何が秘密かは秘密」というような法律が必要なのか。国民を守るために必要と政府は言うが、国民の「知る権利」が侵害されてしまう。秘密を漏らした人だけでなく、知ろうとした人まで処罰の対象とは行き過ぎではないか‐。

 多くの国民が抱く数々の懸念や疑問を一蹴するような審議の打ち切りと採決の強行である。衆院に続いて参院でも自公による「数の力」が反対意見や慎重審議を求める世論をなぎ倒した。

 私たちは、この法案に一貫して反対し、今国会で廃案にして出直すべきだと訴えてきた。恣意(しい)的な指定で秘密が無制限に増えれば、情報公開に基づく健全な民主主義を脅かすと考えるからだ。

 ▼情報は誰のものか

 案の定と言うべきか、国会で審議が進むにつれて疑念は深まり、日を追うごとに世論の反対論も広がった。にもかかわらず、安倍晋三政権は何が何でもこの法案を今国会で成立させるという。

 これは、もはや民意に背く「政治の暴走」ではないか。

 そもそも、政府が国民の税金を使って収集した情報は一体誰のものだろう。私たちは基本的に、主権者たる国民の共有財だと考える。政府は、国民からその管理と運用を負託されているにすぎない。

 国家機密といえども例外ではない。外交や安全保障上の必要性から一定期間は秘密扱いすべき情報があることは認めるが、それもいずれは公開することが前提である。

 特定秘密保護法案に潜む問題の核心は、機密を含む情報が政府と官僚組織の独占的な所有物であるかのように錯覚していることだ。

 国民の批判や疑念に対する政府と与党の釈明も煎じ詰めれば「どうか私たちを信用して任せてください。悪いようにはしませんから」ということに尽きる。だが、それで「承知しました」と納得するほど国民はお人よしではない。

 核持ち込みや沖縄返還をめぐる日米密約問題、大量破壊兵器の「存在」という誤った米国情報に基づいて自衛隊まで派遣したイラク戦争、放射性物質の拡散予測情報が避難住民に知らされなかった福島原発事故…。時の政権が国民に知らせるべき情報を隠したり、読み誤ったりした事例は枚挙にいとまがないからだ。

 秘密保護法制は本来、情報公開の強固な基盤があって初めて成り立つ。欧米の先進諸国に比べ情報公開に後ろ向きとされる日本で、いきなり粗削りの秘密保護法制を打ち立てようとすること自体、無謀で危険と言わざるを得ない。

 ▼公約にない「秘密」

 あらためて問題にしておきたいのは、この法案の「出自」である。自民党は昨年末の衆院選で悲願の政権奪還を果たし、今夏の参院選でも圧勝して衆参ねじれを解消した。

 この2回の国政選挙で自民党の公約に「特定秘密保護法案」の文言はない。総合政策集で「国家安全保障会議の設置」の項目中に「情報保全に関する法整備」などと抽象的に触れただけだ。

 当然、選挙の争点にはならず、有権者の判断材料ともなり得ていない。安倍首相は今国会の所信表明演説でも言及していなかった。

 これほど重大な問題をはらんだ重要法案であるにもかかわらず、国民の前には唐突に現れ、衆参両院での採決強行という非常手段で成立させようとしている。ねじれ解消でうたった「決められる政治」とは、このことだったのか‐と安倍首相に問いたい。

 国家の、あるいは国家間の機密を守るためならば、国民の「知る権利」を大幅に制約することもいとわない‐。もし、そんな考え方だとしたら本末転倒ではないか。

 少なくとも、無謀な戦争と無残な敗戦を教訓に据え、憲法を基軸に自由で民主的な市民社会を一つの理想として追い求めてきた戦後の歩みとはおよそ相いれない。

 「暴走する政治」には私たち国民が主権者として異議を申し立て、歯止めをかけねばならない。


=2013/12/06付 西日本新聞朝刊=

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