WEB特集
どう審議 特定秘密保護法案
11月27日 23時35分
今の国会の焦点となっている特定秘密保護法案は、衆議院を通過し、27日から参議院で審議が始まりました。
これまでの審議で何が問われ、与野党の修正協議を通じて、どう変わったのか。
政治部の山本雄太郎記者が解説します。
今なぜ必要なのか
「法案は国民の安全を守るためのものだ。参議院の審議などを通じて、法案に対する国民の不安や懸念を払拭(ふっしょく)していくよう努めていきたい」。
衆議院通過後、安倍総理大臣は記者団に法案の意義を強調しました。
特定秘密保護法案は、安全保障に関する情報のうち、特に秘匿が必要なものを「特定秘密」に指定して保護するのが目的です。
漏えいした公務員らには、最高で10年の懲役刑が科されます。
政府が法案の成立を目指す最大の理由は、12月4日にも発足する国家安全保障会議、いわゆる日本版NSCを効果的に機能させるためです。
外交・安全保障の司令塔となる日本版NSCは、同盟国のアメリカをはじめ外国政府と機密情報をやり取りします。
日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか、政府は、漏えいを防ぐ法制度がなければ外国政府から重要な情報を得ることはできないとしています。
安倍総理大臣自身、ある国の情報機関のトップから「日本も秘密保全の法整備をすれば、情報交換がもっと進む」と告げられたことを明かしています。
「知る権利」に懸念の声
法案を巡っては、当初から、国民の「知る権利」が侵されかねないと懸念の声が出されました。
「国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」と規定した政府案に対して、与党内からも「不十分だ」という指摘が相次ぎました。
このため政府は「国民の『知る権利』の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならない」と具体的に明記しました。
政府関係者は、憲法で保障された「表現の自由」に加えて、国民の「知る権利」への配慮が明文化されたのは画期的なことだと話していました。
審議で何が問われたのか
しかし、衆議院の審議に入ると、野党からは国民の「知る権利」への配慮が不十分だという指摘が相次ぎ、政府による恣意的(しいてき)な運用をどう防ぐかや、「特定秘密」の範囲や指定期間などが焦点になりました。
日本維新の会は、指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置やすべての情報を30年後に公開することを主張。
みんなの党は、政治主導の観点から、指定や解除の基準を総理大臣が定めることを求め、与党との間でそれぞれ修正協議を行い、合意しました。
修正協議でどう変わったか
与野党の修正協議で、法案はどう変わったのでしょうか。
「特定秘密」の指定は行政機関の長が行いますが、恣意的な運用を防ぐため、総理大臣が有識者の意見を聞いて、統一基準を作成。
基準どおりの運用が図られるよう、必要があれば、総理大臣が行政機関の長に資料の提出や説明を求め、改善を指示することができるとしています。
指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置を求める意見を踏まえ、法案の付則に、新たな機関の設置を検討することも盛り込まれました。
また指定期間は、当初は、最長5年で、行政機関の長の判断で何度でも更新でき、通算で30年を超える場合は内閣の承認を得なければならないとされていましたが、これに加えて、暗号など一部の例外を除いて60年後までにはすべての情報を公開することになりました。
今後求められることは
政府・与党は、日本維新の会とみんなの党の要求に応える形で、できるかぎりの修正を行ったとしています。
これに対して法案に反対する野党は、修正しても法案の大枠は変わらず、国民の「知る権利」を侵すおそれはぬぐえないと批判しています。
また、法案に反対するジャーナリストたちは衆議院通過を受けて都内で集会を開き、「法案が成立すれば、政治責任が問われる情報は闇に葬られていくおそれがある」などと訴えました。
特定秘密保護法案を巡る与野党の攻防は参議院に舞台が移りました。
今の国会の会期は残り僅か。
与党は会期内の成立を目指して、連日、審議を行う方針です。
一方、法案に反対する野党は徹底審議を求めていて、民主党は廃案に追い込みたいとしています。
国民の不安や懸念は払拭されるのか。
参議院の審議では、議論をより深めることが求められます。