東日本大震災:宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ

2013年11月21日

300人を超える住民が犠牲になった宮城県東松島市野蒜地区。全国から集まった青年僧侶約300人が巡礼、鎮魂の読経が海岸に響いた=2013年11月13日、小川昌宏撮影
300人を超える住民が犠牲になった宮城県東松島市野蒜地区。全国から集まった青年僧侶約300人が巡礼、鎮魂の読経が海岸に響いた=2013年11月13日、小川昌宏撮影

 津波によって同地区の湊神社は土台を残すばかり。しかし、その土台に1円玉や5円玉の小銭の小山ができていた。さい銭だ。「こういう時こそ、こういう時だけかもしれないが、心のよりどころがほしいんだ」と気付き、仮のお社を寄贈する活動に乗り出した。

 最終的に目指すのは、祭りの復興だ。「地域の文化に根差した行事。各地に避難している人たちが集まる機会になる。地域の絆を取り戻すためにも祭りは必要」と、みこしや山車の修復にも尽力する。

 儀礼文化学会、国立文化財機構東京文化財研究所、全日本郷土芸能協会など4団体は「無形文化遺産情報ネットワーク」を設立し、被災地の民俗芸能と祭礼・行事、いわゆる祭りのデータを収集・公開している。調査の結果、3県で神楽、獅子舞などの民俗芸能約800件、七夕や火祭りなど祭礼・行事は約500件。再開も多いが、未定、情報なしの祭りも多い。

 久保田裕道・東京文化財研究所主任研究員(47)は、「沿岸部の祭りの民俗学研究は内陸に比べるとあまり進んでいなかった」という。「こんなに多彩な祭りがあると震災後、初めて分かった。いまだにこれだけの芸能を楽しみにやっている地域はめったにない」。祭りの復興からは何が見えるだろう。

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