東日本大震災:宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ
2013年11月21日
傾聴の中では、幽霊談が頻繁に登場してくるという。阪神大震災でもあったが、今回はさらに数が多い。被災者だけでなく、工事関係者、研究者らも遭遇する。津波で壊滅したスーパー跡地を朝方通りかかると、行列している姿が見える。人をひいた衝撃があったが、誰もいない−−。
鈴木光・豪シドニー大学研究員は、昨秋2カ月ほど宮城県石巻市で後片付けのボランティアをしながら被災者の宗教心などに関する調査をした。石巻を離れる前に、あちこちに花を手向けて歩いた。小学校近くの橋の上に差しかかった時、向こうからチリンチリンと鈴の音が近づいてきた。ランドセルにつけた鈴のような気がした。でも誰もいない。川に花を投げながら歩く鈴木さんに、鈴の音はずっとついてきた。橋を渡り終え、「もうバイバイだよ。私は帰るからね」と言うと、まるで近くにいた子がUターンしたかのように、肘の上あたりにふわっと髪の毛かマフラーのようなものが触れたという。
傾聴している宗教者たちは、「これだけ一気に亡くなったんだ、出るのは当たり前じゃないか」と語る。供養を頼まれる僧侶も多い。慰霊碑を建て、鎮めることもある。
◇祭り、絆再び結ぶ
◇人が集まり地域に活気 「よりどころがほしい」
下谷神社(東京都台東区)の阿部明徳宮司(59)が、被災地で支援物資の手配をしていた11年4月初めのことだ。宮城県名取市・閖上(ゆりあげ)地区に入り、ある光景を目にした。