東日本大震災:宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ

2013年11月21日

300人を超える住民が犠牲になった宮城県東松島市野蒜地区。全国から集まった青年僧侶約300人が巡礼、鎮魂の読経が海岸に響いた=2013年11月13日、小川昌宏撮影
300人を超える住民が犠牲になった宮城県東松島市野蒜地区。全国から集まった青年僧侶約300人が巡礼、鎮魂の読経が海岸に響いた=2013年11月13日、小川昌宏撮影

 仙台市の火葬場で読経ボランティアをした僧侶らは遺族の悲しみに向き合った。その経験から、悲嘆ケアをする「心の相談室」が11年4月にスタートした。世界宗教者平和会議(WCRP)などが資金援助し、僧侶、牧師、神職ら超宗派の宗教者が対応する形で心のケアが広がっていった。

 「カフェ・デ・モンク」は、お茶を出しながら被災者の話を聞く傾聴移動喫茶だ。こちらは宮城県栗原市の金田諦応(たいおう)・曹洞宗通大寺住職(57)が11年5月に始めた。金田さんは震災の夜、改めて宗教に出合う体験をした。

 地震、津波に加え雪に見舞われた3月11日。雪がやむと、満天の星が目に飛び込んできた。「人がバタバタ亡くなった一方で、俺は星を見て生きている。これは何だ。我、彼の境目がなくなる『自他不二』という感覚にとらわれた。冷徹なこの現実をありのまま見ていた。しかも限りなく慈しみを注ぐ視点だった」。宗教家の原点といえる視線だろう。以前から自死問題に取り組んでいたこともあって、傾聴のノウハウは身についていた。仲間の僧侶と被災地を回り始めた。

 また、1200カ寺と被災地の寺院数が最多の曹洞宗も、全国曹洞宗青年会が震災直後の3月に災害復興支援部を設立し、「行茶(ぎょうちゃ)」と呼ぶ傾聴を始めた。

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