東日本大震災:宗教が果たした役割とは 不安な夜、頼り、支えられ
2013年11月21日
放射線の影響で自宅には帰れない。斎藤さんは地元では曹洞宗の寺の檀家だった。用事がなくても月に2、3回は寺に顔を出していた。「それができなくなって、心もとなく寂しかった。いろいろ心のよりどころを探したけど、仏様は包容力が違うね」。湊谷さんは夫婦で東京から富岡に移住し、10年目に震災に遭った。三春で死後を託せる寺を探し、福聚寺に行きついた。「無縁仏になりたくないからお寺にすがった」
2人の仮設住宅がある平沢地区には、高台に共同墓地がある。昨年12月、地区の有志7人が参道横に「平沢復興六道地蔵」を建立した。ちょうど仮設住宅を見守る位置に当たる。開眼法要を頼みに玄侑さんを訪ねると、仮設の住民にも参加を呼びかけることを勧められた。有志の一人で区長を務める村田清人さん(64)は、「復興を願いながら一つのことをやり遂げて元気が出た。仮設の人も散歩がてら拝んでくれる」と話す。
寺を核にして、新しい地域の縁が作られようとしている状況を、玄侑さんはこんなふうに見る。「ここで結ばれた縁はやむにやまれぬ選択に思える。移転先も決まらず、先の暮らしの見えない中で現実的に今の安心を求める動きでしょう」