OPCW:「海上の船舶でシリア化学兵器処理」米国が提案
2013年11月30日
シリア化学兵器の処理プロセス
【ブリュッセル斎藤義彦】化学兵器禁止機関(OPCW、オランダ・ハーグ)のウズンジュ事務局長は29日に開かれた決定機関・執行理事会で、シリアの化学兵器の処理について、公海上に輸送船を浮かべ加水分解処理する提案が米国から行われたと報告した。また、化学兵器の関連物質を処理する入札に29日までに28社が応じた。中間処理にあたる海上処理が正式に提案され、最終処理にあたる民間会社も応札したことで、シリアの化学兵器処理プロセスが事実上確定した。
OPCWや外交筋によると、事務局長は29日、41カ国で構成する執行理事会で、米国からの海上処理の提案があり「輸送船を処理用に改造中だ」と報告、「感謝したい」と述べた。場所など詳細は明らかにしなかった。
また、シリアの化学兵器は全量が混ざれば毒ガスを発生する「前駆物質」の形でタンク保管されている。この前駆物質などを高温で燃焼処理する入札に28社が応じた。AP通信はフィンランドの国有処理施設が応札した団体の一つと報じた。
シリアは化学兵器を1290トン保有している。OPCW外交筋や報道によると、うち約800トンの前駆物質を民間会社で直接処理する。イソプロピルアルコールなど危険度のない一部薬品はシリアに残し、猛毒サリンの原料とみられる前駆物質数百トンをシリア西部ラタキア港からデンマークやノルウェーの船で護衛つきで輸送する。
米国が軍用に調達している輸送船を改良して地中海の公海上に停泊させ、移動式の処理施設2基を船上に設置、加水分解処理する。テロなどに備え、米軍艦が警戒にあたる。
加水分解処理では有害な廃液約770万リットルが出る。これも応札した28社の中の民間企業・団体が燃焼などで無害化し来年12月末までをめどに処理する。
これで、シリアの化学兵器の国外搬送から最終処理までのプロセスが事実上、確定した。OPCWの執行理事会はさらに詳細を詰め、12月17日までに国外処理計画を決定する。
今後、輸送方法の確定、輸送船の停泊位置の決定など技術的な問題のほか、3500万~4000万ユーロ(約49億~55億円)かかる廃棄費用を国際社会がどう分担するかも課題になる。