社説

秘密法案強行可決/審議のあり方を問い直せ

 何が秘密情報なのか、それは「秘密です」。逮捕、起訴され詳しい罪状を問うても、それは「秘密です」。そんな危うさを抱えた法律ができる。
 法の名称に特定とあるものの秘密の範囲は特定されず、無制限に広がりかねないというのに、チェックする第三者機関は依然曖昧だというのにである。
 多くの疑問点が指摘され、反対や慎重審議を求める世論が高まる中で、特定秘密保護法案がきのうの参院国家安全保障特別委員会で可決した。参院本会議でも可決されて、成立する見通しだ。
 衆院に続いて参院でも採決が強行された。政府の答弁は日替わりで審議不足は明白だった。
 成立ありきで突き進んだ自民、公明両党の「数の横暴」は容認し難い。法案の欠陥はもとより、議会制民主主義の存立基盤を揺るがす対応でもある。
 衆参の多数が異なる「ねじれ国会」が解消、与党は「決める政治」を推進できる環境を得た。ただ、国民は巨大与党に数の力に任せて一方的に決めてしまう強引な議会運営を求めてはいまい。全てを白紙委任されたと都合良く解釈し怖い物なしで臨めば、期待は失望に転じよう。
 自民党は7月の参院選選挙公約に秘密保護法制定を明記していない。今国会で成立し4日発足した「国家安全保障会議」(日本版NSC)との関連で必要性を強調するだけでは不十分で、時間をかけた説明が要る。
 防衛、外交など一定期間、秘密にせざるを得ない情報はあるだろう。ただ、閣僚ら行政機関の長が、実際は官僚が恣意(しい)的に「特定秘密」に指定することを容認するものであってはならない。明確な歯止めが必要だ。
 現行法制でも秘密は十分保全されているとの見方がある。情報共有を進めたい米国で、重罰を科しても漏えいが起きており、むしろ技術的な情報管理の充実が先決だとの指摘もある。
 国民の「知る権利」やプライバシーを侵害し、公務員ばかりか民間人も罪に問う秘密保護法を制定する安全保障上の効果はいかほどか。疑問は尽きない。
 情報公開法が施行されたのは2001年。情報の公開を進め、国民への説明責任を果たし、民主的な行政運営に資するのが目的だ。必ずしも理解が十分でない状況で、公開法の拡充は秘密の拡大を抑える上で有益だろう。ぜひ、検討してほしい。
 野党の対応はお粗末だった。世論を受けて最終的に各党とも反対、慎重審議にかじを切ったが、みんなの党はいち早く自民党にすり寄り、日本維新の会の追随を誘った。両党が公明党に自民党の補完勢力化を促した側面もあるだろう。各党、あらためて立ち位置を見定めるべきだ。
 与党絶対優位の政権における審議は、いかにあるべきか。重要政策を政争の具にせず、国民の思いをくみ取りつつ審議を尽くす。信頼をくじく今回の経緯を教訓とし、「決めること」とともに、政策の質の高まりを伴う「決め方」を重視する国会運営に努めなければならない。

2013年12月06日金曜日

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