13年夏に韓国で出版されベストセラーになった大衆小説『千年恨 対馬島』は、政権与党の意向に沿った内容だ。日韓の開戦前に旅行者を装って対馬に入っていた特戦部隊が、開戦と同時に対馬の浅茅湾に集結していた自衛艦隊に、至近距離から携行用ミサイルを浴びせて勝負を決する。いかにも彼の国が考えそうなひきょう者の戦術だ。
しかし、この小説の最大の問題点は、痛快・ポルノの展開の中に、対馬領有権に関する韓国側の一方的な主張を、巧みに鏤(ちりば)めていることだ。この国策小説を読んだ韓国人はポルノ場面に興奮し、痛快な勝利に留飲を下げつつ、「そうだ、対馬は韓国の領土なのだ」と確信するだろう。まさに愚民化・洗脳小説だ。
韓国人が語る「対馬領有権」の根拠はひどくずさんなものだが、日本人はそれを論破する知識を身につけておくべきだ。
ここでは紙幅の制限もあり書ききれないが、12月5日に出版される拙著『呆韓論』(ぼうかんろん、産経新聞出版)の中に、対馬領有権に関する韓国の主張に対する最低限の知識をまとめた1章を設けた。ご一読を乞う。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「日韓がタブーにする半島の歴史」(新潮新書)、「悪韓論」(同)などがある。