たとえ中国が力ずくで日本から尖閣諸島の支配を奪い取ったとしても、マイナス面の方が潜在的利益より大きいだろう。無人の島嶼は競合するナショナリズムと大国間の綱引きの象徴だが、戦略的価値はほとんどなく、守るのも難しい。
外交的な後遺症も甚大だろう。中国政府は、アジアで日本を孤立させたいと思っているが、そのような行動は結局、日本に対する地域の強力な支援をもたらすことになる。日本に対する中国の疑念を共有する1つの国、韓国でさえ、中国のADIZに憤慨している。
何より、中国は何世代にもわたって、アジア第2位の経済大国の敵意を確実なものにするだろう。自国経済が開かれた貿易体制に依存する中国は、強硬な手段によって、中国が描く地域構想を日本が最終的に尊重せざるを得なくなると考えているようだ。
しかし、可能性の高い結末は、2つの非常に異なる選択肢のうちのどちらかだろう。日米同盟が強化されるか、あるいは、日本が核爆弾の可能性すら含む防衛力強化の方向に向かうか、だ。中国は、日本の軍国主義の復活について絶えず警鐘を鳴らしてきたが、その復活の条件を整えているのだ。
近隣諸国への威嚇を続けたら、中国は非常に孤独な大国になる
こうした状況はどれも、中国がどのような大詰めを念頭に置いているのかという疑問を提起する。オーストラリアのポール・キーティング元首相は北京での最近の講演で、中国のジレンマについて説明した。キーティング氏は、この地域における中国の利益を受け入れ、中国と勢力を共有するために米国がもっと多くのことをすべきだと考える数少ないアジア太平洋地域の元指導者の1人だ。
だが、同氏は中国の聴衆に向かって、それとは大きく異なる呼びかけを行った。「日本が安全であり、かつ自国が安全だと感じない限り、アジアにおける安定した平和な秩序はあり得ない」と述べたのだ。
中国が米国を犠牲にして次の世紀を形作りたいと本当に思っているのなら、中国は自国の優先事項を前進させ、自国の目標を推し進めるために友好国や同盟国を必要とする。代わりに、もし中国が近隣諸国を威嚇する取り組みを強化するなら、中国は非常に孤独な大国になるだろう。