大村雪乃展 Wonderful night

 美術という言葉を使わずにアートというわざわざ舶来由来の言葉を使うのは、ものづくりという行為の過程において魔術的な魅力が立ち上がって欲しいという願望もあるのではないのだろうか。日常のその辺りに転がっているものを劇的に変化させてしまう不思議な力が美術家にもあったらいいなという期待がその裏に見え隠れしているような気がしなくもない。そうした日常でよく見かけるものに不思議な魔法によって新たな生命を吹き込んだといえる作品が並んでいるのがこの個展であろう。
 私がこの作家さんの作品を初めて見たのは東京ミッドタウンアワード2012であった。随分と面白いことを考えつくもんだと偉く感心したものだが、TV出演や受賞歴をみると十分に納得のいく話である。文具の丸シールを貼り付けて夜景を浮かび上がらせるという手法は、実際に作品を目の前にすると誰もが思いつきそうと考えてしまうところでもあるが、いままで同様ともいえそうな作品にお目にかかっていないところをみると、この作家さんのオリジナリティはかなり担保されているといっていいだろう。「夜景」というものを構成する点光源を丸シールに一対一対応させるという発想は美術というものが科学にそのルーツを持つということの良い例証ともいえそうである。大量生産される製品であるシールを素材として使用する以上は、手癖などは最低限消されるわけであるが、それ以上のものつくりのセンスという部分が作品に込められる余地があるといえ、ある意味でこの作家さんの感覚の鋭い部分が美術作品として平面上に定着しているようにも思える。

ギャラリーQ
大村雪乃展 Wonderful night
13/09/09 – 13/09/14


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