特定秘密保護法案に対するメディアの批判・攻撃がすさまじい。法案が衆院を通過した翌日(11月27日)の各紙社説は「民主主義の土台を壊す」(毎日)、「ほとんど情報統制の世界に近い」(東京)などと、イソップ寓(ぐう)話(わ)の「オオカミ少年」もかくやとばかりに警鐘を乱打していた。
とはいえ、こうした扇情的報道には違和感を禁じ得ない。国民の「知る権利」と民主主義の危機は、実は菅直人政権時に訪れていたと思うからである。
安倍晋三首相は4日の党首討論で、菅政権が隠蔽した尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の中国漁船衝突事件の映像を流した元海上保安官、一色正春氏の最近の言葉をこう紹介していた。
「先般、一色氏がテレビに出て『かつて出すべき情報を勝手に秘密にした。こうして(秘密の指定と解除の)ルールを決めることが大切だ。出すべき映像を出さないと判断できる状況が問題だ』と言っていた」
現在、安倍政権はこの映像について「特段の秘匿の必要性があるとは考えにくい」(菅(すが)義(よし)偉(ひで)官房長官)とし、「特定秘密」にも該当しないと答弁している。
海保は映像を即日公開するつもりで準備していた。中国に過剰に配慮した菅政権の恣(し)意(い)的(てき)な横やりがなければ、もともと「秘密」でも何でもなかったのだ。