富士山滑落事故。実際に現場で起きていた事。
皆様、
この度は色々とご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
ご存じの方も多いと思いますが、
今回の富士山の滑落事故の際、
偶然にも近くに居ました。
こんな事、
ブログにあげる事も無いと思っていましたが、
憶測が憶測を呼び、
事実とは明らかに違う状況になっています。
その内容があまりにも酷いので、
本意では無いですが、
当日、実際に現場で起きていた事を、
自分なりに書いてみたいと思います。
僕らが遭難PT(以後PT)を初めて確認したのは日ノ出館でした。
PTは既に沢をトラバースして赤岩八合館辺りでした。
次に確認したのは、
見晴館跡を過ぎ大弛沢に入ってからで、
長田尾根の碑を巻くと
PTは既に山頂まで半分近くの場所に居ました。
この時に、
既に報道されている、
何らかの理由で下山してきた女性とすれ違い軽く挨拶。
少し先行していた、
やまちゃん(以後Yさん)達に合流してボチボチ歩いていると、
山頂方面から氷がバラバラと勢いよく落ちて来る。
大袈裟だが、
10センチもある氷は時として凶器です。
上を見ると、
50m程上まで近づいていたPTが、
氷の斜面をピッケルで掘っている。
ウソでしょ?
止めてもらおうと、
「おーーい!」と声を掛けるが止まない。
距離もあるし風もある。
聞こえないんだと、
登りながら2度目は声を張って呼びかけると、
やっと気が付いたのか止めてくれました。
これが、
Yさんが“怒鳴った”と表現したせいもあり、
問題になってるところですね。
正確には聞こえるまで「止めて!」って叫んでたという感じです。
危険なので少しルートを外して追いついたシーンを、
偶然動画で撮ってありました。(11:53)
奥に見えるのがPT。
あの場所で、
何らかの理由でバケツを掘っていたようです。
ご覧の様に、
まだ夏道が出ていたので、
そのまま彼らの方に進み
「こんにちは」「ごめんね」と挨拶をして追い越させてもらいました。
憶測で云われる様なトラブルは無いです。
(彼らの内心は確かにわかりませんが、
この程度でメンタルが崩れたら低山も歩けないハズ)
「しかし何をやってたんだろね?」
「ザイルを出してたから、危ないからとアンザイレンでもするのかな?」などと、
(ここまでは繋いでませんでした)
4人で話したりしながら登っていると、
10〜15分後に、
「落ちた!」とYさんが叫ぶ。
振り向くと、
先ほど追い越した辺りから、
4人が一緒に滑り落ちて行くのが見えました。
ウソだろ!
やっぱり繋ぐ為だったんだ。。
その少し前に岩場を登ろうとしていたのを仲間のKさんが確認。
どうも、
硬い斜面を避けて、
岩の露出した方向を登ってきていたらしい。
(岩場は一見安全そうですが、溶けて固まるを繰り返すせいか硬い場合が多いです)
Yさんが、すぐに警察に電話を入れる。
急いで助けに向かいたかったが、
こんな滑落が起きる位、
当日のこの辺りは氷が硬め。
かと言って下りられない程では無かったが、
(やってる方なら上の画でわかると思います)
もしもの事を考え、
一旦登り態勢を立て直すことにしました。
長田尾根、
富士宮ルートも偵察にいったが、
一番安全そうな富士宮のブル道で下りる事に。
9合半を過ぎて、
御殿場への尾根をトラバースしようとしていると県警のヘリが到着
尾根を越えると丁度事故現場。
近寄ると、
先ほど途中下山した女性と、
単独の登山者さん一名とで救助作業中。
一人は既に心肺停止状態だという。
残りの3人は意識はあるが、
とても起きられる状態ではない感じ。
肝心のヘリは、
画でわかるようにガスと安定しない気流で近寄れない様子。
保護シート、ツェルト、ダウン、ブリザードバックなどで保温する事位しかできないが、
声をかけながらできるだけ介助をしガスが晴れるのを祈る。
が、
ガスは晴れるどころか増してくる。
厳しいかな?
数十分後、
「ヘリは撤退」とYさんから聞く。
万事休す。
この間、
これも誤解され非難をうけている“怒鳴る”状態で、
Yさんが警察と電話で何度も接触していたのだが、
切羽詰まった状態で語気を強める事があっても、
“怒鳴る”様な事をする人で無い事は、
Yさんを実際に知ってる人ならわかりますよね。
要救助者を救って欲しいと願う必死の要求でした。
(ここでは雪山遭難で救助要請するなとかは無しでお願いします」)
そのうち上空には、
はるか彼方を旋回するヘリが数機。
クソ!報道か。
すでに我々が現場到着から1時間が過ぎ。
寒さが襲ってくる。
15時が撤退ラインだなと思っていると、
Yさんからもその合図。
それまでに何とか!
だが、
祈ってもガスは晴れない。
そうこうしていると、
女性が歩けそうと言う。
よし!
ガスは夕方には晴れるハズ。
このままでは終わらないだろう。
あとは救助隊に任せて、
歩ける女性と一緒にみんなで下山する事にしました。
しばらくするとガスに突入して、
上の様子は見えないけど、
我々が下りてもヘリの音が止まない。
それどころか、
低空でのものに聞こえる。
きっと上は晴れたんだ!
絶対に救助作業をしてるよ!
なんて話していると、
ガスが晴れ
本当に救助作業をしているヘリが見えた!
やったね!
これでみんな助かるよ。
怪我をした女性も
肩を落としていた付き添いの女性も少しは元気が出たよう。
こっちも頑張って下りなきゃ。
だが、
実際はそんなに甘くない。
現場は御殿場ルートだからね。
途中で6合辺りで暗くなる前に食事をとり、
ヘッデンを点けてゆっくり歩く。
ゆっくりゆっくり6時間近く歩き、
20時頃御殿場の駐車場に到着。
要救助者を救急車に乗せて完了。
かと思ったら、
警察の事情聴取・・・
それはまだよいとしても、
報道の厚かましさと言ったら・・・
煌々とライトを向けてカメラを回す。
ヘリといい
地上班といい
まったく好かんね。
真実なんて報道できないのに。
それは今回の消防ヘリのミスでも明らか。
落としてしまった(これも確かでは無いが)シーンも間違いなく撮っているハズだけど出ないでしょ。
でも、
ヘリのミスが本当だとしても、
オレは、
救助隊は責められないというスタンスです。
あの状況で飛んで作業をしてくれただけでも感謝かなと。
間違いなく生きていた彼なのでとても残念だし、
せっかくピックアップしたんなら助けて欲しかったけど、
難しいけど、
今回は飛んでくれた事には感謝しないといけないと。
そもそもが自己責任の世界なんだから。
以上、
これが今回の実際の現場の状況です。
文才も無いので伝わらなっかったかと思いますが、
少しでもご理解いただけたら幸いです。
追伸。
今回の事故の皆さん、
誰一人泣き言一つ言いませんでした。
オレだったら、
あの極寒の中にあの怪我だったら悲鳴の一つも上げたと思います。
ヘリで救助された男性も、
残念ながらそうで無かった男性も、
自力下山の女性も、
(この子はなんと骨盤骨折だったそう)
不運にも事故は起こしてしまったけど、
皆さん立派な方でした。
「自己責任」
あらためて考えています。
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