国際原子力機関(IAEA)の調査団が東京電力福島第一原発で増え続ける汚染水の海洋放出の検討を助言したことについて、菅義偉官房長官は5日の記者会見で、「安易に放出しないという方針に変更はない」と述べ、従来通り放射性物質の除去作業に努め、海洋放出については慎重に対応する考えを示した。

 菅氏は「地元関係者の理解や原子力規制委員会の判断を得ていくことが大事だ」とも述べ、海洋放出するかどうかの判断にあたっては、被災地の理解などを踏まえることが重要との認識を示した。

 汚染水問題で東電は、62種類の放射性物質を取り除くとされる設備ALPS(アルプス)で処理を進めているが、トリチウム(三重水素)は取り除けないため汚染水として管理する総量は減らない状態が続いている。これに対し、IAEAは4日にまとめた報告書の概要で「基準値を下回るものは海への放出を検討すべきだ」として、海洋放出を容認する考えを示していた。

 政府の汚染水処理対策委員会では現在、トリチウム処理に関する国内外からの提案を受け、追加対策を年内にもまとめる方針。