2008年11月15日

青森県大間 マグロ御殿を探しに行く

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海のある所に行けば美味しい魚介が食べたくなる。
ただ、テレビの旅番組などで紹介されるようなグルメの名所には、それほど執着があるわけではない。
いわゆる酒飲みが旨い肴を求めたがる、くらいのものだと思う。
そういう人間であっても、青森県大間のマグロと、大分県佐賀関のサバという名前だけは、知らぬ間に耳にこびりついている。
たぶんそれだけメディアへの露出が多いのだろう。

そんなわけで函館に行ったついでにフェリーで津軽海峡を越え、青森県大間町に行くことにした。
マグロの方は、産地ならではのリーズナブルな価格であれば食べてもいい、といった程度。
それよりも、もし大間に、かつての江差のニシン御殿ならぬ「マグロ御殿」があるならば、是非見物したいと思ったからだ。

あまり知られていないということだが、津軽海峡には海の国道が走っている。
モータリゼーションの進展とともにフェリーの運航が始まったころ、津軽海峡で途切れる北海道と本州の道が海上区間も含めて1本の国道に指定されることとなった。
その海上区間が海の国道で、現在は3本の国道がある。
うち1本が函館港から大間港を経て両岸を結ぶ国道279号線。
だから私が乗ったフェリーは、「国道279号線を走る船」ということになる。

国道に指定されているということは、この航路がいかに重要なものであるかを物語っていると見て間違いはなかろう。
だが、函館港フェリーターミナルに着くや否や、そういう思いに水を差すような貼り紙を目にした。
この函館港・大間港を結ぶフェリーの運航会社である東日本フェリー株式会社は、あらゆる経営努力もむなしく今月(2008年11月)末をもって解散、以後は道南国道自動車フェリーという会社に運行が委ねられるというのである。

たまたまやって来たよそ者にとっても、心が動じずにはいられない。
会社が解散するということは、ついさっきテキパキと私の乗船手続きをしてくれた若い女性の係員も職を失うということか、
などという感傷的な思いが頭をよぎる。
もちろんフェリーの乗組員他関係者もみな同じ境遇だ。一部は新会社に再雇用されたとしても全員が全員そうなるわけではないはずだ。

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さて、フェリーは1時間40分で大間港に到着。
どこでも同様、フェリーターミナルというものは町の外れにあるためか、あたりは寒々としていて小さな商店や民家がパラパラと見られる程度である。
町の案内地図があるにはあるが、長い間描き直されていない様子でどうにも心もとない感じがした。
案の定、いきなり道に迷ってしまったが、行くつもりのなかった先で目に入ったのは、家電製品のリサイクル業者の敷地。テレビや冷蔵庫の残骸が無造作に積み上げられていた。

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ウェブの画面をコピーした地図をカバンから取り出し軌道修正。最初からそうしておけばよかったのにと若干の反省。
殺風景な海沿いの道を15分ほど歩くと、商店や民家のやや集積した通りにさしかかった。その先に大きな郵便局が見えたから、たぶんここが大間町の中心地、メインストリートになるのだろう。

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もっとも、メインストリートといったって、その長さはせいぜい200メートルあるかないか。
その両側には、朽ちかけた店舗を修理しないままに営業を続ける小さなスーパー、仏具・神具から日用品・ギフトまでを扱うよろず屋、食堂やスナックが各数軒、廃業した釣り具店や旅館、看板の取り払われた信用金庫の元支店など。手持ちの地図に記載されているガソリンスタンドは、廃業したのがすっかり更地になっていた。
それなりに車の通行量もあるようだし、人の往来も少なくないから「寂れた町」という感じはしないが、かといって「マグロ景気に沸き立っている」という様子でもない。

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正午を回ったのでガソリンスタンド跡の横にある大衆食堂風の店に入る。
店内に貼られたメニューには、マグロづくし丼だのが、2800円、3200円といった値付け。
一人旅の昼食には不相応だと感じたので、海老鍋定食950円也を注文した。

料理が来るのをぼんやりとテレビを見ながら待っていると、調理場から出てきた若い男が「すみません」と声をかけてくる。
われわれは東京のテレビ局の者で、これから店内の撮影をするが後ろ姿が映っても問題はないか、とのこと。
やがて出てきた海老鍋を食べ終わり、店の従業員に聞いてみれば、「大間のマグロ一筋オヤジ」とかいうタイトルでテレビ放映されるらしい、ということだった。

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食堂のあるメインストリートから1筋北はもう海だ。食後はその海辺の道を散歩。
浜には小さな漁船が陸揚げされ所狭しと並んでいる。船のことは詳しくないが、所々が損傷していたり、底に堆積した土から雑草が芽を出していたりと、どうやらしばらくの間使われていないのではないかと思える船も少なくなかった。

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海岸には一ケ所海に着き出した小さな半島状の場所があり、半島の先まで道が延びている。
もちろん海に出会うと行き止まりになるのだが、地図を取り出し確認すると、この道が国道279号線。行き止まりと思った先は海の国道の始まりだった。

半島の片側の海辺にはいくつもの漁船が停泊しているが、そこには「関係者以外立入禁止」の立て札が、もう片側には、とうの昔に営業をやめてしまったようなスナックが見えた。

地図を見れば大間の内陸部には、細い道が不揃いな網目のように走っている。いよいよ旅の本題であるマグロ御殿を探しに、その網目の道を歩き潰すことにした。

「マグロで有名な町」という事前の知識がなければ、どこにでもあるような田舎町。
そういう田舎町のご多分に漏れず廃屋が目に付く。そういう中に先ほどと同様、とうの昔に営業をやめてしまったようなスナックや寿司屋が点在する。
予想していた以上に廃屋、廃店舗の類が多いので、少々考えてしまう。

一口に廃屋、廃店舗と言っても、文字通り逼迫して夜逃げしたようなものもあれば、単に住む人がいなくなった空き家のようなものもあるのかもしれない。別に新しい家を建て、古い家を物置き代わりに使っているから、それが廃屋に見えるということもありうるだろう。

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そういう中にも、何軒かに1軒くらいの割合で、新しく大きな家が建っていた。現在新築中という工事現場もあった。
ただしそれらは、町の真ん中にこのような家があればさぞかし「豪邸」に見えるのだろうが、こういう土地の広い田舎町では「比較的立派な家」に思えるくらいのものだった。

大間にはマグロ御殿があるかもしれない、などというのは、自分が勝手に期待しただけのこと。
だが、実際にそういうものが存在するとしたならば、これらの新しい家がそれに当たるのかもしれない。

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小さな町だったから日が沈むまでにたいていの道は歩き潰すことができたようだが、町役場、公民館、図書館など公の施設は簡素で古びた木造が多かった。
町外れに1つだけ、カラフルで大きな建物が見えたので確かめに行くと、そこはできたばかりの小学校で、教師風の男性がデジタルカメラで校舎を隈なく撮影していた。
それにしてもモダンで豪華そうな校舎である。体育館の外壁には大きく校歌が書かれてある。

東北の町はどこも若者の流出が悩みの種だという話を聞くが、人に誇れるような母校があるということは、過疎対策の一助となり得るかもしれない。
柄にもなく無責任に、そんなことが思い浮かんだ。

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宿泊は1泊2食付8500円という小さな旅館。夕食時に宿の奥さんに、大間の景気はどうですか、と尋ねたところ

大間の漁師はマグロとイカと昆布で生計を立てているが、そのうちマグロ漁をしているのはほんの一部。しかもマグロ漁なんて博打のようなものだから、たくさんマグロを漁れる人はもっともっと限られてくる。それに最近は以前ほども漁れなくなった。だからいくらマグロで有名でも、それが町を潤しているとは思えない

と教えてくれた。

夕食後、腹ごなしに町を再び散歩。
昼間のたたずまいから、とうの昔に廃業していると思っていたスナックや寿司屋のいくつかに灯がともっていた。

翌日、早朝のフェリーで函館に戻る。
往路は気がつかなかったが、船の中に「大間のマグロ一本釣り」を紹介するパネルが掲示されていた。
その説明文によると

大間の人口は約7000人でそのうち半分が漁師、その中の200人がマグロと闘っている。
4トンクラスの漁船に1、2人で乗り込み、数百キロのマグロを狙う。
マグロは「海の黒ダイヤ」とも呼ばれ、1匹あたり数百万円。
マグロのいるポイントがつかめず1年間、1匹も釣れないことはよくあることだし、釣れたとしても軍手のみで数百キロのマグロと格闘することは命がけの漁となる(抜粋・要約)

とのことだった。

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posted by kenchikuondo at 00:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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