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党首討論 議論まだ尽くされていない 2013年12月05日

 会期末を6日に控えた臨時国会は4日、焦点の特定秘密保護法案を中心に党首討論を開いた。自民、公明両党は同法案を5日の参院国家安全保障特別委員会で採決後、6日の参院本会議で成立させる方針だが、討論を聞いて議論はまだまだ尽くされていないとの思いを強くする。

 驚くのは、安倍晋三首相が4日の同特別委で唐突に組織やポストの新設を明らかにしたことだ。それらは(1)「特定秘密」指定などの妥当性をチェックする保全監視委員会(2)秘密指定の統一基準を策定する情報保全諮問会議(3)特定秘密が記録された公文書の廃棄の可否を判断する公文書管理審議官の三つである。

 安倍首相の説明によれば、保全監視委員会は内閣官房に各省庁の事務次官級を中核にして設置。メンバーには正副官房長官や内閣情報官も入る見通しだという。情報保全諮問会議も政府内に設置し、情報の保護や公開、文書管理、報道、法律の専門家で構成する考えのようだ。監視委員会は「特定秘密」指定や解除などの妥当性をチェックした結果を首相に報告する役割を担い、首相は受け取った結果を毎年、諮問会議に報告する仕組みにするという。

 日本維新の会やみんなの党との修正案には、妥当性をチェックする仕組みとして「独立した立場の監視機関設置の検討」が明記されていた。安倍首相はぎりぎりになって、監視機関の具体的な内容を持ち出してきた格好だが、いずれも政府内に設置され、官僚がメンバーの多くを占めることになる。これで第三者機関としての客観性が担保されるのか。甚だ疑問だと言わざるを得ない。

 この点については党首討論でも、民主党の海江田万里代表が「特定秘密のチェックは、役人の手から離れないといけない。有識者も交えるというが、首相の言いなりのお友達なら諮問機関とは言えない」と主張。「官僚による官僚のための情報隠し法案だ」と批判した。

 海江田代表は、あくまで慎重な審議を要求。自公両党と修正合意したみんなの党の渡辺喜美代表も「強権的な国会であってはならない。会期を延長すべきだ」と述べ、“数”に頼った与党の国会運営を戒めた。

 首相はこの日初会合を開いた国家安全保障会議(日本版NSC)に触れ、「秘密を保全しなければ、NSCは機能しない」と法案の意義を強調。「どこかで終局させる判断をしなければならない」として、成立を急ぐ姿勢を変えなかった。

 だが、有識者や文化人をはじめとして法案に反対する市民の声は日増しに大きくなっている。象徴的なのは、国連のピレイ人権高等弁務官が日本政府に向けて発した懸念だ。同氏は「(法案は)秘密の定義が十分明確でなく、政府が不都合な情報を秘密扱いにする可能性がある」「情報へのアクセス権や表現の自由に対する適切な保護規定を設けずに、法整備を急ぐべきではない」「政府と立法府に対し、国内外の懸念に耳を傾けるよう促す」などと述べた。

 人権に目を光らす国連高官からの「警鐘」と受け取れる。政府は丁寧に審議を進めるべきだ。衆院に続いて、参院でも強行採決という暴挙に及ぶことがあってはならない。


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